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たまにはリィンとともに出かけるのもいいかと思い、外にでる。
あまり外に出ないためか、リィンはきょろきょろと辺りを見回している。興味はあるんだろうが、俺から離れようとはしない。
もう少し外に連れて行ってやるべきか。
「リィン、何か食べるか?」
さっきから露店を遠目で見ていたリィンだが、そう声をかけても俺に遠慮しているのか、首を縦に振ることはない。
これは、食べたいとか言わねぇな。リィン自身は食べたそうにしてるが。
仕方ねぇ。
適当に注文し、それを受け取り、俺の行動に不思議がってるリィンを抱え、近くのベンチに座る。
「食うか、リィン?」
「それはますたーが買ったものですから」
やれやれ、やっぱり食べたがらないか。
何口か食べ、リィンに渡す。
「ますたー……?」
「俺はもういらないから、残りはお前が食え、リィン」
「……いいんですか?」
「あぁ」
俺の手から受け取り、俺の許可が出たからなのか、リィンはゆっくりと食べ始める。
しばらくはゆっくりと食べていたリィンだったが、今は嬉しそうにもぐもぐと食べている。だが何を思ったのか、俺の方を向いて申し訳ないような顔をする。
「あ、あの、ますたー……食べ、ますか?」
「後はお前が食べてもいいと言っただろう?」
「でも、ますたーが買ったもので……」
「お前にあげたものだ」
「で、でも……」
やれやれ、どうするものか。
お前のために買ったやつだと言っても素直に食べねぇしな。
「リィン、一口くれ」
「あ、はい!」
とは言ったものの、どうしようって悩み始めたリィンにくくって笑う。
およおよとし始めたリィンが持っているスプーンにのっている分だけをぱくりと食べる。それに驚いてるリィンの頭を撫でてやる。
「後はもうお前が食べろ」
遠慮がちに頷き、残りはリィンが頬張る。
そんなリィンを眺めながら、今日結社にやってきたあの男のことを考えていた。
あの男は、俺がリィンを呼んだとき微かに反応していた。あの村の出身か。リィンに余計なことを吹き込むことはないだろうが、それでも用心に越したことはねぇ。
それに白面には特に会わせたくねぇし。
──隠しておくのが、一番か。
いまだにアイスを頬張ってるリィンの頭を撫でながら、今後どうするか悩んでいた。普段なら面倒臭がって悩むことすらしねぇが、リィンのことなら別だしな。
それからしばらくして、俺はリィンを連れてユミルという郷の近くに来ていた。
「ますたー?」
「リィン、しばらくここで暮らせ」
「……え?」
そう告げるとリィンは泣きそうな顔をしていたが、あの男から隠すためだ。
近くにユミルの領主がいたのを確認しているからすぐに拾われるはずだ。
「ま、ますたー……?」
不安そうなリィンに声をかけようとしたが、そろそろタイムリミットだとわかり、リィンに名前以外は言うなと告げ、その場にリィンを残し、少し離れた場所に転移した。
その場からその後の様子を見ていた。
泣きそうな顔をしているリィンを見ると、今すぐにでも行って抱えてやりたいと思うが、それはダメだ。
無事にリィンがユミルの領主に拾われていくのを見届け、俺はその場を離れた。
リィンはしばらくしてユミルの領主であるシュバルツァー男爵に養子として引き取られた。それから数日、俺はユミルの郷に近くでリィンにしか聞こえない方法でリィンを呼ぶ。
すでに夜はふけり、近くで魔獣が徘徊している気配はするが、リィンなら問題なくここに辿り着けるだろう。
「ますたー?」
俺が呼ぶ声を聞き、急いできたのだろう。息が切れている。
いつもなら近づいてくるリィンは、俯いたままその場から近寄ってこない。俺の方から近寄り目線をリィンに合わせる。
「どうした、リィン」
「ま、ますたーは、俺が……いらないと……もう、会えないと……」
「こうして会いに来ているだろう?」
「でも……」
俯いたままのリィンの頭を撫で抱き上げる。
目が赤くなって腫れているようにみえる。泣いていたか。
「リィン、いつか必ずお前を迎えに来る。だからそれまではここで暮らせ。暇な時は会いに来てやる」
「本当、ですか……?」
「あぁ」
それでもまだ不安なのだろう。リィンはずっと俯いたままだ。
しかたねぇ、俺のものだという証でもやるか。
「リィン、これをお前にやろう」
俺はつけていたアクセサリを外しリィンの首にかける。
「ますたーの、アクセサリ……?」
「俺がいない時はそれを見て俺を思い出せ」
そう告げるとコクリと頷くリィンの頭を撫でる。
俯いたままだったリィンだったが、俺が付けてたアクセサリをつけてやると嬉しそうに笑う。
「リィン、また来る。今日のように合図を送る。そのとき、会いに来たければ好きに来ればいい」
「は、はい。分かりました」
その日はそれだけでリィンと別れた。
別れ際、リィンはまた悲しそうな顔をしていたが──。
後日、リィンにやったアクセサリのお返しにリィンからペンダントを渡された。いらなかったら捨ててくださいと言われたが、なぜお前からもらったものを捨てないといけないのか。
捨てねぇってつぶやきが聞こえたのだろう、嬉しそうにリィンは微笑む。そんなリィンの頭を撫でると本当に嬉しそうだ。
(……やっぱり連れて帰りてぇ……)
他の人にはわからないかもしれないけど、マスターが嬉しそうにしてて、俺は安心したんだ。
置いて行かれるのは嫌だけど、こうして会いに来てくれるだけでも俺は嬉しいんだ。本当はマスターとずっと一緒にいたいけど、マスターが困るなら、俺はマスターが迎えに来てくれるその日まで我慢しようって、そう思ったんだ。
拾ってくれたユミルの領主とその家族は優しいけど、その時が来たらきっと俺はマスターを選ぶと思う。だって、俺はマスターがいなかったらここにはいないかもしれないのだから。
だからマスターが望むどおりにしたい。
きっとまた会いに来てくれるよね、マスター。
たまにはリィンとともに出かけるのもいいかと思い、外にでる。
あまり外に出ないためか、リィンはきょろきょろと辺りを見回している。興味はあるんだろうが、俺から離れようとはしない。
もう少し外に連れて行ってやるべきか。
「リィン、何か食べるか?」
さっきから露店を遠目で見ていたリィンだが、そう声をかけても俺に遠慮しているのか、首を縦に振ることはない。
これは、食べたいとか言わねぇな。リィン自身は食べたそうにしてるが。
仕方ねぇ。
適当に注文し、それを受け取り、俺の行動に不思議がってるリィンを抱え、近くのベンチに座る。
「食うか、リィン?」
「それはますたーが買ったものですから」
やれやれ、やっぱり食べたがらないか。
何口か食べ、リィンに渡す。
「ますたー……?」
「俺はもういらないから、残りはお前が食え、リィン」
「……いいんですか?」
「あぁ」
俺の手から受け取り、俺の許可が出たからなのか、リィンはゆっくりと食べ始める。
しばらくはゆっくりと食べていたリィンだったが、今は嬉しそうにもぐもぐと食べている。だが何を思ったのか、俺の方を向いて申し訳ないような顔をする。
「あ、あの、ますたー……食べ、ますか?」
「後はお前が食べてもいいと言っただろう?」
「でも、ますたーが買ったもので……」
「お前にあげたものだ」
「で、でも……」
やれやれ、どうするものか。
お前のために買ったやつだと言っても素直に食べねぇしな。
「リィン、一口くれ」
「あ、はい!」
とは言ったものの、どうしようって悩み始めたリィンにくくって笑う。
およおよとし始めたリィンが持っているスプーンにのっている分だけをぱくりと食べる。それに驚いてるリィンの頭を撫でてやる。
「後はもうお前が食べろ」
遠慮がちに頷き、残りはリィンが頬張る。
そんなリィンを眺めながら、今日結社にやってきたあの男のことを考えていた。
あの男は、俺がリィンを呼んだとき微かに反応していた。あの村の出身か。リィンに余計なことを吹き込むことはないだろうが、それでも用心に越したことはねぇ。
それに白面には特に会わせたくねぇし。
──隠しておくのが、一番か。
いまだにアイスを頬張ってるリィンの頭を撫でながら、今後どうするか悩んでいた。普段なら面倒臭がって悩むことすらしねぇが、リィンのことなら別だしな。
それからしばらくして、俺はリィンを連れてユミルという郷の近くに来ていた。
「ますたー?」
「リィン、しばらくここで暮らせ」
「……え?」
そう告げるとリィンは泣きそうな顔をしていたが、あの男から隠すためだ。
近くにユミルの領主がいたのを確認しているからすぐに拾われるはずだ。
「ま、ますたー……?」
不安そうなリィンに声をかけようとしたが、そろそろタイムリミットだとわかり、リィンに名前以外は言うなと告げ、その場にリィンを残し、少し離れた場所に転移した。
その場からその後の様子を見ていた。
泣きそうな顔をしているリィンを見ると、今すぐにでも行って抱えてやりたいと思うが、それはダメだ。
無事にリィンがユミルの領主に拾われていくのを見届け、俺はその場を離れた。
リィンはしばらくしてユミルの領主であるシュバルツァー男爵に養子として引き取られた。それから数日、俺はユミルの郷に近くでリィンにしか聞こえない方法でリィンを呼ぶ。
すでに夜はふけり、近くで魔獣が徘徊している気配はするが、リィンなら問題なくここに辿り着けるだろう。
「ますたー?」
俺が呼ぶ声を聞き、急いできたのだろう。息が切れている。
いつもなら近づいてくるリィンは、俯いたままその場から近寄ってこない。俺の方から近寄り目線をリィンに合わせる。
「どうした、リィン」
「ま、ますたーは、俺が……いらないと……もう、会えないと……」
「こうして会いに来ているだろう?」
「でも……」
俯いたままのリィンの頭を撫で抱き上げる。
目が赤くなって腫れているようにみえる。泣いていたか。
「リィン、いつか必ずお前を迎えに来る。だからそれまではここで暮らせ。暇な時は会いに来てやる」
「本当、ですか……?」
「あぁ」
それでもまだ不安なのだろう。リィンはずっと俯いたままだ。
しかたねぇ、俺のものだという証でもやるか。
「リィン、これをお前にやろう」
俺はつけていたアクセサリを外しリィンの首にかける。
「ますたーの、アクセサリ……?」
「俺がいない時はそれを見て俺を思い出せ」
そう告げるとコクリと頷くリィンの頭を撫でる。
俯いたままだったリィンだったが、俺が付けてたアクセサリをつけてやると嬉しそうに笑う。
「リィン、また来る。今日のように合図を送る。そのとき、会いに来たければ好きに来ればいい」
「は、はい。分かりました」
その日はそれだけでリィンと別れた。
別れ際、リィンはまた悲しそうな顔をしていたが──。
後日、リィンにやったアクセサリのお返しにリィンからペンダントを渡された。いらなかったら捨ててくださいと言われたが、なぜお前からもらったものを捨てないといけないのか。
捨てねぇってつぶやきが聞こえたのだろう、嬉しそうにリィンは微笑む。そんなリィンの頭を撫でると本当に嬉しそうだ。
(……やっぱり連れて帰りてぇ……)
他の人にはわからないかもしれないけど、マスターが嬉しそうにしてて、俺は安心したんだ。
置いて行かれるのは嫌だけど、こうして会いに来てくれるだけでも俺は嬉しいんだ。本当はマスターとずっと一緒にいたいけど、マスターが困るなら、俺はマスターが迎えに来てくれるその日まで我慢しようって、そう思ったんだ。
拾ってくれたユミルの領主とその家族は優しいけど、その時が来たらきっと俺はマスターを選ぶと思う。だって、俺はマスターがいなかったらここにはいないかもしれないのだから。
だからマスターが望むどおりにしたい。
きっとまた会いに来てくれるよね、マスター。
サイト掲載日 [2015年5月20日]
© 2015 唯菜
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