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Acostic elegance

「リィン」
 名前を呼ばれて、瞼を開く。
「……ユーシ、ス?」
 応えようと口を開いて、自分の枯れた声に目を瞠る。微かに咳き込めば、すっとマグカップが差し出された。
 温かな湯気を立てる、柔らかな色のミルクティー。
 受け取って、一口、口に含む。渇いた喉を、甘くいい香りのお茶が通り抜けて潤していく感覚。
 ふわりと鼻腔を擽る香りに、あの夢をみたのはそのせいだったかと思い至って苦笑する。
「ありがとう、ユーシス」
 ミルクティーのおかげか、今度はすんなりと声が出た。微かなジンジャーと蜂蜜の風味の効果かも知れない。
「礼には及ばん。アーリーモーニングティーを妻の元に運ぶのは夫の朝の最初の仕事だ」
「……っぐ」
 陽光を紡いだような髪と南洋の煌めく海の色の双眸、白皙の美貌でさらっとそんなことを言われて。女の子だったら喜ぶところなんだろうけれど。
 あやうく紅茶ごと吹き出すところだった。
 ふぅ、と息を吐いて、気を落ち着かせる。折角ユーシスが入れてくれた紅茶だ。零すなんてもったいない。
 じっとりと睨み上げれば、淡い笑みで返されてますます、顔が熱くなる。
「あー……えっと、ユーシスは飲まないのか?」
 トレイの上にはもう一つ、お揃いのマグカップが置かれているから、てっきり一緒に飲むつもりで持ってきたのかと思っていた。
「そうだな……」
 こくりと頷いて、椅子をベッドサイドに持ってきて腰を下ろす。伏せられた長い金色の睫毛に朝日が反射してきれいだなぁとか、カジュアルなマグカップと、質実な第三寮の椅子でも、ユーシスがそれをやるのはなんというか様になるから不思議だ。
 そんな思いが顔に出ていたんだろうか。それとも不躾に見過ぎたのか。伏せられていたユーシスの瞼がゆっくりと開いて、ばっちりと真正面から視線が合う。
 どくり、と鼓動が跳ねた。
 光に透けて蛍光を帯びたような双眸が眩くて、目を逸らす。
「……なんていうか、ユーシスって紋章入りのティーセットとか使っていそうなイメージがあってさ」
「まぁ、バリアハートの実家ではそうだったがな……おまえだって実家にはあるだろう?」
「皇帝陛下が来られた時用に棚の奥にあるのかもしれないけどさ、普段は結構普通の食器だったよ」
「まぁ……シュバルツァー男爵らしいな」
「ああ、そう思う――そういえば、夢を見たんだ」
「夢?」
「子供のころの、松ぼっくりを拾いに行く夢」
 カップを握りしめて、目を伏せる。
「ユミルじゃ冬は寒いからさ、こっちで使うような茶器で紅茶入れてもすぐ冷めてしまうんだ。だから、松ぼっくりでお湯を温めながらお茶が飲める茶器があって」
 どう説明すれば、分かってもらえるだろうかと、苦笑する。
「ティーアーンのようなもの、か」
「バリアハートにも、そういうものもあるのか?」
 ティーアーンとやらを見たことはないけれど、なんとなく俺の説明でユーシスが思い至ったのならそれは近しいものなんじゃないだろうかと思う。
「だから……紅茶の香りを嗅ぐと、思い出すのかもしれない」
 松ぼっくりの弾ける音と匂い、立ち上る湯気と、糖蜜菓子への思い入れ。我ながら、子供じみている自覚はあるけれど。
「薄い、透けるような磁器じゃなくてさ、テラコッタの二度焼きしたダルマ型のティーポットと、冷めにくい陶器のカップで甘いジャムやお菓子と一緒に飲むんだ」
「なるほど、匂いは特に記憶と結びついているともいうしな」
「ユーシス?」
 どこか納得がいったというような表情に、首を傾げる。
「ミルクティーのブレンドに、松で燻した茶葉をほんの一つまみ加えたからな」
「……あー、聞いたら確かに、微かに松の香りがする」
 すん、と湯気と香気を吸い込んで、確かめる。無意識にその香りを、懐かしい過去とすり合わせていたんだろう。
 ユーシスに松ぼっくりの香りのお茶の話はしたことはなかったと思う。以前、プレゼント用の茶葉を薦めたことはあったけれど。
「やっぱり、ユーシスの入れてくれる紅茶、好きだな」
 温かなカップを見つめてしみじみと思う。
「……夢に見る程、実家の紅茶が飲みたいんじゃないのか?」
 じとりと睨み付けられて、首を傾げる。
「夢には見たけど、あれはユミルであの状況で飲むからおいしいんであって、トリスタならこの紅茶がいい」
「……お前という男は、まったく」
 どこか諦めたような表情は。
 夢にでてきた母さんの表情と、どこか似通っていて。
「ごめん、俺――また間違えた、か?」
「リィン……?」
「ユーシスに、そんな顔をさせたいわけじゃないんだ」
 エリゼや、アリサに。散々言われたけれど。
「気にするな、お前が悪いわけじゃない――そういう朴念仁なところも、お前らしさだろうが」
「そう、なのかな……」
 縋る様に、ぎゅっとカップを握りしめる。
「時々、俺っていう存在がすごく曖昧になる気がするんだ……あの力の方が、俺の本質で。今の俺の――『リィン・シュバルツァー』という存在はただの擬態で、本当は存在しないんじゃないか……って」
 吐き出した言葉は、自分で思っていたよりも随分と重かったのかもしれない。口にしてみれば、胸のつかえがとれたような気がする。
「ごめん……身勝手だって、わかってるんだけど……な」
 家族にも。打ち明けたことがない思いだった。口にすれば、あの優しい人たちを傷つけることが分かっていたから。
 ユーシスにだって。黙っているつもりだったのに。
 つい漏らしてしまったのは、寝起きでいまだに頭が上手く回らないせいか。懐かしい夢をみて感傷的になっていたのか。
それとも、ユーシス・アルバレアという男の持つ雰囲気だとか、俺とユーシスとの関係性だとか。そういったもののせいなのか。
「ごめん、すまない、つい愚痴ってしまって……こんな話、聞かされても気分悪いよな――忘れてくれ」
 軽蔑されたり、嫌われたり。重いと思われたらどうしよう。そんな思考が頭の中をぐるぐるとまわる。
 やってしまった、と。
 ユーシスと、視線を合わせることすら、辛くて。手の中の暖かなカップの中のミルクティーの水面をじっと見る。
 もし、俺がただの擬態なんだとしたら、このカップを暖かいと感じることやユーシスが入れてくれた紅茶をおいしいと思ったことも、全部、なかったことになってしまうんだろうか。
 そう考えて――なんとなく、それは嫌だと思う。
 あの獣じみた力の方が俺の本質なのだとしても、あれに俺の思い出だとか想いを、渡す気にはなれない。それは俺だけの物だろう。と。
 やっぱり俺は、自分で思っている以上に強欲なんだと思う。
 自嘲の苦さを飲み下そうとカップを口に運ぼうとした手が、止められた。
「……ユーシス?」
  呆れて、去ってしまうと思っていた相手が、まだこの部屋にいて。自分の手に触れていることに首を傾げる。
「お前という奴は、まったく」
 諦めを孕んだような笑みは、けれど冷たくはなくて。涼やかに、爽やかに。
 浮かべられた笑みに、見惚れる。
「……お前が望むなら、毎朝ベッドティーを淹れてやろう。フレーバーティーを一つまみ入れた甘いミルクティーを」
 朝日に透けて蛍光を帯びたように煌めく碧い双眸から、目が逸らせない。
 手を包み込むように掴まれる。
 母さんのような優しさも、エリゼみたいな柔らかさもないそれは、けれど。俺には分不相応なくらいに温かい。剣を握るための、手。ユン老師よりも大きな。
 つん、と鼻の奥が痛んだ。視界が、じわりと滲む。
「嘘、だ」
 声がみっともなく震えるのを、唇を噛みしめて耐える。
「俺は嘘は吐かん」
「だって馬術部の朝練とか大変だろ?」
「お前だって早朝から稽古してるだろうが……俺の分を淹れるついでだ、気にするな」
「気にしないわけがないだろ」
 ついでだといったって。それでもユーシスの手を煩わせてしまうのは心苦しい。
「ならば聞くが――お前は俺と同じ茶を飲むのは嫌か?」
「いやなわけないじゃないか、そんなの」
 むしろ嬉しい。
 そう思ってしまってから、口にしてしまった言葉に気付いて唇を噛みしめる。そうしたところで何一つ解決しやしないけれど。
目も、顔も。火を噴きそうなくらいに、熱い。
「ならば問題はあるまい」
「……むしろ問題しかないよ」
 言って、息を一つ、吐く。
「俺は、Ⅶ組で、ユーシスやみんなと出会ってよかったと思ってる」
 ユミルに引き込んでいては、見れなかっただろう帝国の状況。すべてを知ってすべてを理解しているわけじゃないけれど。それでも。
「でも、だからこそユーシスを俺なんかに縛り付けるわけには、いかないだろ?」
「リィン……リィン・シュバルツァー」
「ユーシスの声が、俺の名前を呼んでくれるの、好きだな」
 艶のある、ユーシスの声が好き。大切そうに、それでいてどこか思い通りにならない苛立ちの混じる声で。
 それは、この紅茶みたいに微かに甘くて、馨るようで。
 カップが揺れて、紅茶の表面に波紋が浮かぶ。
「お前が望むならば、いくらでも呼ぼう」
「ユーシス」
 見上げて、首を横に振る。
「好きだから、駄目なんだ」
「どういう意味だ?」
 柳眉を顰めるユーシスに、目を細める。
「だって、好きで大切だから、それが当たり前になるくらい慣れてしまったら――失うのが怖くなる」
 手の中のカップは、少しその熱を失ってきている。マグカップだから、冷めにくいとは言っても秋も深まってきているんだ。冷めるのはあっという間だ。
 人の、心だって。
「リィン……リィン・シュバルツァー」
 呼ばれて、目を閉じる。
「何故失う前提で考えるんだ」
「そうだな、具体的に指摘しようか?」
 くつり、と湧いた自虐的な笑みを見せたくなくて、カップでユーシスから隠す。唇を、咥内を、喉を潤して胸がほんのりと暖かくなる気がする。
「四大の筆頭のアルバレアの二男ならば、その果たすべき貴族の義務もわきまえているだろう? 俺はクロイツェンの領民でもないしお前の庇護下にあるわけでもない」
「お前は領民全員に俺がアーリーモーニングティーを淹れてやって運んでやるとでも思っているのか」
 苦笑とともに吐き出された言葉に、笑う。
「そういう意味じゃないよ――でもそんなに離れてもいない、かな」
 ノブレスオブリージュ。それを、いかに体現するのか。
「ユーシスは、しかるべき良家の息女にそういうことをするべきだろ……領民のことを思えば猶更」
 貴族だから自分勝手に我儘にミラに任せて豪遊する生活ができると思われているんだろう。実際、そういう貴族も少なくはないのが現状だ。停滞して澱んで膿むように。だからこそ、宰相ギリアム・オズボーンをはじめとする改革派が台頭することになった。
 けれど。
 入学して半年。同じクラスで同じ寮で、特別実習で、知ったユーシス・アルバレアという男は、そんな現状をよしとしはしないだろう。
 そしてそれをユーシスが為す上で俺はそのパートナーとして隣に立つことは、ありえない。俺は俺にできることをやるだけだ。
 それは、ユーシスを傅かせて毎朝紅茶を運ばせることじゃない。
「まぁ、アルバレア家の人間としてはあの公爵の駒と徹するべきなのだろうな」
「違う」
「違わないだろう? お前は俺にユーシスという個人ではなくアルバレアとしての役目を果たせという」
「公爵の駒としてじゃなく、俺の知っているユーシスとしてアルバレアの義務を体現してほしいんだ……俺の我儘だってことは、わかってる、けど」
 こんなの、ただの願望の押し付け、だ。月が欲しいと泣く子供と変わらない。
 だから、子供の戯言だと、聞き流してくれればいいのに。
「お前が望むならば」
 耳を打った言葉に、目を瞠る。
「俺にやれることならば、叶えて見せよう」
 そう、鮮やかに笑んで。自信をのぞかせて応えるユーシスを、睨み付ける。
「なんで……」
「そうでもしないと、お前は信じないだろう」
「そんなことしなくたって、俺はユーシスを信用してる」
 寧ろ、それくらい俺が信用されていないということなんだろう。
「俺を、じゃない……お前が、お前をだ」
「俺を、か」
そんなの。信じられるはず、ないじゃないか。
ずくり、と疼いた気がする胸の痣に意識が向く。
 いくら表面を繕っても。多少、制御できたとしても。それでも、いつ、『あの力』に裏切られるかもわからない。素性も得体も知れない――化け物。誰かに、何かに依存していないと暴走して、みんなを殺してしまいかねない。
 信じるな。明け渡すな。俺が俺であるためには、ずっと俺自身を疑い怪しみつづけろ。自分で自縛して、動けない様に。
 ユミルのシュバルツァー家で、俺には過ぎるほどの厚意を受けても。何も返せるものも、ない。俺の意識も、この身も。
 そこに。何の価値も見いだせやしない。
「阿呆が」
「……ああ」
 わかってる。否定なんて、できやしない。
 きつく握りしめた手の中で、マグカップが軋む。
 ――手放さないと。壊れてしまう。そう、わかっているのに。
 意識すればするほど、手は自分の意思を裏切ってカップの暖かさを確かめようとするように握りこんでいて。本当に自分のことながら愚かさに目を伏せる。
「阿呆、か」
 再び聞こえた声の間近さに目を上げれば、言葉の意味とは裏腹に氷青の双眸を柔らかく細めたユーシスと視線がかちあった。呆然とした瞬間に、カップが手の中から奪われる。
「……ぁ」
 強張っていた指は、ユーシスの手ですんなりと、ユーシスの思い通りに動かされてしまう。
 一度俺から離れたユーシスは、そのまま部屋を出て行ってしまうのかと思っていたら、マグカップを机に置いて再び戻ってきてくれた。そのことに、ほっとしてしまう。本当なら、俺なんか置いていくべき、なんだろうけれど。
 みんなが、ユーシスが優しいから、望んじゃいけないことまで期待して、望んでしまう。甘やかされ過ぎたんじゃないだろうか。
「阿呆、だな」
「……三回もいわれなくたってわかってるさ」
 傷つくような繊細さを持ち合わせている覚えはないが。はぁ、と息を吐いてユーシスを見上げる。
「お前がお前を信じられないというのならば、信じるまで毎朝、紅茶を運んでやろう」
 俺なんかの両手を包むみたいに跪いて。誓いを立てる騎士のように。その姿はひどく様になってはいるけれど、だからこそそこに俺が収まっていることに対する違和感と、罪悪感。
「じゃあ、信じたらもうユーシスの入れてくれるアーリーモーニングティーは飲めないのか」
 くつりと笑って、そう訊ねれば、碧の双眸が細められる。
「そうだな――お前が信じようと信じまいと。毎朝お前のために茶を入れて寝室に運ぼう」
「そんなに簡単に約束していいことじゃないと思うぞ? ユーシス」
「考えて立ち止まる時期はとうに過ぎたということだ」
 簡単に決めたのではなく考えて決めたというのならば、尚更。
 蛍光を帯びているような鮮やかな眸から、視線を逸らすことができない。魔女の目は緑色だったか。ならば、子供のころユミルの山で見かけた駒鶫の卵のように綺麗な碧に、何かの魔力が宿っていたところで不思議はないのかもしれない。
「……お前のことだから、俺の状況を気遣ってやめろとか考えているんだろうが」
 言い当てられて、ああやっぱりユーシスは何か魔法が使えるんだなと、頭の片隅で意味もなく納得してしまう。と、ユーシスの瞳孔がわずかに開いた気がした。
「ユーシス?」
「いや……今、何か妙なことを考えただろう」
「妙な事っていうか、ユーシスはまるで魔法使いみたいだな、とは思ったけど」
 口にしてみれば、それはたしかに子供じみた『妙なこと』で。
「ごめん、うん、変だな十分、聞かなかったことにしてくれ」
 たまらなく恥ずかしくて、いたたまれなくて。けれど視線はユーシスに捕らわれたまま逸らすこともできなくて。
 ひどく、情けない顔をしているんだろうという自覚はあるのに。それを隠すこともできない。
「何故そう思った」
「えっ……」
 逸らされず真っ直ぐに見据えられて、息を飲む。硬質な印象の声は、けれどどこか鮮やかに色づいて聴こえる気がするのは、惚れた欲目だろうか。
「俺の考えていたことを読んだ、から?」
 問われるままに答えれば、ユーシスはふぅ、と一つ息を吐いた。
「……半年、ずっとお前を見てきたんだ。何を考えているかくらい、おおよそ見当はつく」
「俺ってそんなにわかりやすいのか」
 それはそれで、どうなんだろうと思わなくもないけれど。それでも。
 ユーシスが自分を見ていてくれたということに心のどこかが高揚する気がするから。俺は自分が思っているよりも、随分と簡単で単純にできているんだろう。
「糖蜜菓子」
 ふと、口をついてでた言葉にユーシスがわずかに首を傾げる。
「お前の唐突さには慣れているつもりだったが、どういう意味だ?」
「糖蜜菓子をもらえるなら、少しだけでも自分を信じてやろうと思えるかなって」
 そう言ってみれば、これじゃまるで強請っているようじゃないかと思って苦笑が浮かんでくる。
「お前が望むなら」
 少し考えるように。
「作り方と材料を図書館で調べてこないとならないな……あとは買い物か」
 至極真面目にそういうユーシスを見て、笑みが深くなる。
「ユーシスのせいで自惚れそうになるだろ」
「お前の場合、多少自惚れるくらいでちょうどいいだろうが」
「でもユーシスなら、買って済ませることもできるだろ? そうしないで、俺の我儘に応えようと作ろうとしてくれるんだから」
 くつくつと湧いてくる愉悦は、おそらくろくなものじゃないんだと思う。
「本当に、得難いものだなぁって」
「惚れ直したか?」
「俺に惚れられる方が困るだろうと思うけど、な」
 自分で考えてみたところで、俺みたいにめんどくさい相手を恋愛対象にするのは御免こうむりたいところだろうに。
「だから少しは自覚しろ、と」
 苦言は、けれどどこかしょうがない奴だというような甘さと優しさを孕んでいて。
「リィン。リィン・シュバルツァー」
 ユーシスの手が、俺に触れる。丁寧に手入れされた貴族の手でありながら、なんでも自分で器用にこなしてしまう魔法みたいな手と指。
 夢で見たときのように、物を知らぬ子供ではない。知らなかったのだという言い訳すら、使えないのに。
 触れられる心地よさを知ってしまえば。もう、一人で生きていけるなんて思えなくなってしまいそうで。
 それが、酷く恐ろしくて。けれどどこまでも甘美で。
 触れられるままに、目を伏せた。

サイト掲載日 [2014年8月23日]
pixiv [2014年8月22日]
© 2014 水瀬
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開設:2014/02/13
移転:2017/06/17
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