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恋い焦がれての別バージョンとして書いたものです。
設定は恋い焦がれてのマクリンと同じです。


 その招待状が届いたのは放課後だった。
 見回りをしているときにその招待状は突如として目の前に舞い降り、俺の手元におさまった。こんなことができる人物はそれほど多くはないだろうと、ある程度想像をつける。
 開けてみると結社の執行者の一人、《道化師》カンパネルラからで、内容は食事に君を招待するよというものだった。そこでマクバーンと一緒に待っていると。最後に一言、なるべく君一人できてほしいけど、難しそうなら別の子たちがいてもかまわないよと書かれていた。
(これ、どうするべきか……日付は、今日なんだが……しかも帝都か……)
 行かなくても問題はないかもしれない。でも気になってしまう。
 マクバーンも一緒に、と書かれていることから相手は俺とマクバーンの関係をもちろん知っているのだろう。話したいこともあるが、誰かに相談して言ったほうがいいだろうな。
 そう思って分校長に相談した結果、明日は自由行動日ということもあり、行ってこいと言われ、外出も許された。
「一人で行くつもりか?」
「一応そのつもりですが……」
「それは危険ですってば!! ……って、あ……」
 外にいる気配にすでに気づいてはいたが、まさか勢い良く入ってくるとは──。まぁ、分校長はそれを咎めるどころ面白がっている気がするが。
「雛鳥たちも連れていくがいい。幸い明日は自由行動日なのだから、夜遅く、もしくは明日になろうが気にすることはないだろうからな」
「はぁ……わかりました。それでは、失礼します」
 クルトたちと共に分校長室を後にする。
「えっと、すみません……」
「まぁ、分校長は気にしてなかったから気にすることはないだろう」
「それにしても教官、一人で行こうとするなんて危険ですよ!! 相手はあのクロスベルに現れた《道化師》と《劫炎》なんですよね?」
「流石に一人で行くのは危険ではないでしょうか? もし一人でいかれて、何かが起きた後では、遅いのでは?」
「招待された身で何かが起きるとは思わないんだが……そうだな、何かが起きた後ではダメだな」
 ただ、彼らがついてきたらマクバーンと二人きりで話ができるか、わからなくなったなと思ったが、彼らがついてこないという選択肢はないだろう。
 彼らなりに心配してくれてるのはわかるが。
「それじゃ、いったん宿舎に戻ってから駅に集合してくれ」
「分かりました」

 その後、各自宿舎に戻り、今日の授業に使っていた荷物を置く。
 特に用意するものはないが、あるものを取り出す。
 それはずっと、彼に渡したかったもの──。
(受け取ってもらえるか、その前に渡せるかわからないけれど、一応持っていくか……)
 クルトたちがいるからどうなるかわからないけれど。
 それでも、少しでも渡せるタイミングがあればと願う。
 時間を見てそろそろ駅に向かうべく部屋から出る。セレスタンさんに一言告げると、すでに連絡を受けていたのだろう。状況を把握してたらしく、いってらっしゃいませと送られた。
 駅に着くとすでにクルトたちはいて、共に帝都に向かう列車に乗り込む。そして程なくして帝都に着き、指定された場所へと向かう。
 そこには道化師が待っていた。
「ふふ、ようこそ。本当は一人で来てほしかったんだけど、予想通りにそっちの子たちも来たね。まぁ、中に案内するよ」
 中へと入っていく道化師の後に続くように俺たちも中へと入る。
 奥の部屋へと案内され、そこに入るとマクバーンがだるそうにして座って待っていた。俺に向ける視線には特に問題なかったんだが、一緒に入ってきたクルトたち新Ⅶ組には殺気を微かに含んだ視線を向けていた。新Ⅶ組は僅かにビクリと震えている。
 だが、すぐに興味を失ったのか、視線を元に戻し、道化師はやれやれという仕草をしながらマクバーンの隣へと座る。
 俺たちも座ると、いくつか料理が運ばれてきた。タイミングが良すぎるが、それを気にしたところで無駄だろう。
「ふふ、招待したのはこちらだから何も気にせずに食べるといいよ。何も手を加えてないから、そこも安心していいよ」
 そう告げられたところで、クルトたちが警戒していることは見て取れた。
 自分が先行して出された料理に手を付けた。
「教官!?」
「大丈夫だ。それに折角出された料理が冷めてしまってはもったいないだろう?」
「それはそうですが……」
 俺が一口二口と食べ進めるのを見て、渋々といった感じだったが、クルトたちも料理に手をつけ始めた。
 道化師は楽しそうに面白そうにこちらを見ながら食べていた。マクバーンの方はいつものようにだるそうに肉料理を主に食べていた。

 ある程度食事が進んだところで、切り出してみた。
「なぜこの招待状を?」
「ん? あぁ、灰のお兄さんとはちょっと話してみたかったんだよね。パンタグリュエルではブルブランやマクバーンとは個人的に話したことあるんでしょ?」
 パンタグリュエルと言われて、ピクリとしてしまう。
「確かに、内戦のときに怪盗紳士やマクバーンとは個人的に話したことはある。怪盗紳士には勧誘されるし……」
「へぇ、彼も勧誘してたんだ。まぁ、話って灰のお兄さんにこっちにこない? っていうお誘いだったんだけどね?」
「なっ……!」
 それに反応したのは、クルトたち生徒たちの方だった。
 俺の方は静かに首を横に振る。それは絶対にないと──。
「ちぇ、ふられちゃったか」
 道化師は俺の答えが絶対わかっていただろう。
「だから言っただろう。こいつは絶対に首を縦に振らねぇってな」
「そっちの生徒さんたちを人質に取ったらどうなるんだろうねぇ?」
 道化師はクルトたちを見ながら聞くが、それでも俺の答えは変わることはない。無茶をしてでもそれは阻止するだろう。
 正直、この二人相手に俺が全力を出してでも勝てるとは思わないが。特にマクバーンが本気を出したら、絶対に勝ち目はないだろう。
「それでも、俺はその誘いにのるつもりはない」
「やっぱりダメか。まぁ、答えはわかってたけど」
 やっぱりわかってたか。
 こちらの反応を見ては楽しんでるんだろうな、道化師の方は。マクバーンは──さっきからこちらをじっと見つめている。
「ふふ、まぁ気を取り直して食事の続きといこうじゃないか」
「おい、灰の小僧。酒に付き合え」
「それは──」
「付き合え」
「……わかった。こちらはそこまで飲み慣れていないから、それは考慮してもらいたいんだが」
 と言ったところで、好きに注がれるお酒を見て、こちらで調整するしかないと思った。
 マクバーンは面白いのか、クク、と笑っているしな。クルトたち生徒は心配そうに見つめてくるが、大丈夫だと告げる。
(本当に大丈夫なのか、わからないけどな)
 少し遠い目になってしまうのは仕方がないことだと思う。

 それからしばらくは晩酌の相手をしてた。
 クルトたちは最後まで付き合うかのように飲み物を飲んでいたが。
 そろそろ帰りをどうするか考えるべきかと思っていたが、部屋を用意しているとかでそこに案内された。部屋を見てクルトたちは男子と女子で分かれたようだ。俺は一人部屋に通され、隣はマクバーンのようだった。
 道化師は用があるとかで去っていったみたいだったが──。
 クルトたちに一応気をつけるようにとは言ったが、反対に俺のほうが気をつけるべきだとか言われてしまった。それはきっと、勧誘されたからだと思うが──。
 一人になり、どうするべきかと悩んだ。
 マクバーンと話したいことはある。だけど──。
 悩んでしまうのは、不安からなんだろうが。そう思っていると、部屋のドアが開いた。
「入るぞ」
 といいつつ、すでにもう入ってきているマクバーンの姿が──。
「できればノックしてほしかったんだが……」
「別にいいだろう?」
「それで、何か用なのか?」
「クク、用があるのはお前もだと思うが、迷ってそうだな? まぁ、まだ飲み足りねぇから少しは付き合え」
「……わかった」
 マクバーンを中へと案内する。と言っても、ほとんど部屋の中に入ってきてたが。
 部屋に常備されていたグラスを二つ用意する。氷も用意し、テーブルに置くと、マクバーンは好きに注いでいる。
 対面に座ろうとして、隣に座れと言われ、断る理由もないためマクバーンの隣へと座る。
「さっきも結構飲んでたと思うんだが、あれだけ飲んでも飲み足りないのか?」
「度数が高くねぇのはただの水だろう。熱くもならねぇ」
 そう言いながら、マクバーンは度数が高い酒を薄めずに飲む。さっきは俺に合わせてくれていたのか、それほど度数は高くないとは思っていたが。
 俺は飲み慣れていないということもあり、薄めて飲んでいく。
「それでお前は何を悩んでいる?」
 ビクリと震える。
「それ、は……」
「俺に聞きたいことがあるなら聞いてみればいいだろう? 今は誰もいない。聞けるぞ?」
 聞いても大丈夫なんだろうか。今俺が思っていることを──不安に思っていることもある。それを聞いても、いいのだろうか。
「だったら俺が先に聞くか……と思ったが……」
 不意に気配を感じ取り、視線をドアの方へと向ける。
 マクバーンは明らかに不機嫌そうにドアを見つめている。舌打ちもしているし。
 ため息を着き、仕方がないとドアの方へと向かおうとしたが、先にマクバーンが立ち上がり勢い良くドアを開ける。
「いい度胸しているな、ガキども」
 明らかに殺気を含んでいる。
 クルトたちもまさか開けるのがマクバーンだとは思わなかっただろう。動けないでいた。
「マクバーン……」
 マクバーンは舌打ちをし、こちらへと戻ってくる。
 クルトたちも入らせる。このままだと他の人たちに迷惑かかるだろうから。
 俺の隣にドカリと座り、再び酒を呑み始めたマクバーンは、明らかに不機嫌だとわかる。
「それで、どうしたんだ?」
「彼がこちらの方へ入っていくのを見てしまったので、心配で……」
「あぁ、ノックされずに入られたが、特に問題はなかったんだが……。普通にさっきの食事の時のようにお酒の相手をしていただけだよ」
 彼らは彼らなりに心配してくれたんだろうが、これでまた、聞きたいことが聞けなくなる可能性は高くなったなと思った。
 いまだにマクバーンは不機嫌そうに酒を呑んでいる。
「彼と二人きり、と言うのは危険なのではないのでしょうか?」
「パンタグリュエルでも、二人きりで話したことはあるんだが……」
「油断は禁物なんじゃねぇのか?」
「……マクバーンに何を言ったところで、無駄だろう」
 今はとりあえず、隣で不機嫌そうに酒を呑み続けているマクバーンをどうにかしないといけない気がするんだが。
「クク、まぁ、俺の方はそいつらがいてもいなくても聞いても問題はないんだが、お前の方は違うだろうな?」
「っ……マクバーンの……聞きたいことって……?」
「お前の今の妙なことになった原因」
 妙なこと。
 鬼の力のことだとわかる。クルトたちはわかっていなかったが。
 俺もそのことについては話したかったことの一つでもあるから別にいいんだが、クルトたちがいると言うのは躊躇してしまう。
『あ、それは僕も興味があるなぁ』
 道化師の声が響く。それと同時に姿を現す。
 覗き見してたのかと思ったが、マクバーンがそれに気が付かないわけがないだろうと思い、本当に今戻ってきた可能性があるか。
「えっと……」
「どうせお前のお仲間──そいつらじゃない方は知ってるんだろう? 黒兎は知っていそうだが、お前が言わないならお仲間の方に直接聞きに行くか」
 それだけは止めてくれと心底思ってしまう。
 このままでは本当に行ってしまいそうだと思い、それにこれは自分が個人的にも聞いてもらいたかったことでもあるから。でも、本当に聞きたかったことは聞けないかもしれないと思いながらも口を開く。
「北方戦役のときに、市内に放たれていた大量の大型人形兵器が暴走して、目の前で市民が攻撃されかけた時にヴァリマールを召喚して鬼の力を解放したんだが、最後の大型人形兵器を何とか倒した倒したところまでは覚えているんだが……気を失っていた3日間の間、鬼化の状態は解除されず衰弱した状態が続いて……最悪、そこで死んでいたかもな……」
 そう、そこで命が落ちていた可能性だってある。
 もし、そこで本当に命を落としていたら、マクバーンはどう思ってくれただろうか。
「大量の大型人形兵器って……」
「それに衰弱した状態だったって……」
 生徒たちが結社に疑いを向けるのは仕方がないが、本当に結社が絡んでいたのかどうか、分からない。
 それに、同時に暴走するものだろうかと、疑問がある。
「彼らじゃない可能性は十分にあるから……それに同時に暴走したことがどうにも気になっているが……」
「ふーん……灰のお兄さんは別に結社が原因とは思ってないんだ?」
「可能性はあるかもしれないが、事実はわかっていないし」
「へぇ……」
「まぁ、俺の鬼の力が制御できなくなってしまったのはそこからだ。もういいか?」
 俺の話はここまでだと、話を切る。
 俺が言いたかったことの一部はマクバーンに話すことができた。今は、それでいいと思った。
「あ、そうそう。君たち学生なんだから恋人とかいるのかな?」
 なんで道化師はこの質問をしてくるんだ。
 生徒たちが答えるわけもない。
「えー、なんで答えてくれないんだろう……」
 誰も答えてくれずに道化師は不満気だ。
 いたとしても、敵である人物には教えないのではないだろうか。
「じゃあさ、灰のお兄さんは? 灰のお兄さんにはいないのかな?」
 にやりと聞いてくる。
 いることも、相手が誰かも知っているはずだろうに。
「あ、それは私も気になります」
「あれだけ美人が周りにいたんだ。誰かしらいたんじゃねぇの?」
 何故そこにミュゼとアッシュまで乗りかかってくるんだ。
 隣りに座っているマクバーンがかなり怖いんだが。
「へぇ、お前さん、お仲間の中にそんな相手がいたのか?」
 僅かに怒りが込められてるような気がするのは気のせいではないと思う。
「いやいや、いないから! 恋人は……」
「いるよね、相手」
「え、そうなんですか!?」
「え、いや……」
 道化師、絶対面白がってるだろう。
 相手が相手だから、それが言えないことも。
 質問攻めにあい、このままでは埒が明かないと思い、相手がいることだけ伝えようと口を開く。
「……相手は、いるが……旧Ⅶ組でも分校にもいない、とだけ……」
 そう言うと、さらに質問攻めにあってしまった。誰だ誰だと主にミュゼとアッシュが聞いてくる。アルティナにも聞いているが、アルティナも知らないだろう。
 そんなに気になることなのだろうか、俺の相手が──。
「……でも、今はどう思われているんだろうな……」
「教官……?」
「なかなか会えない相手ではあるし、連絡手段も持ってないし……最初はそれでも仕方がないと思っていたけど、もし……もし北方戦役のときに命を落としてて、それを知った時、どう思ったかとか……どうしていたかとか……。今、何も思われてなかった場合のことを考えたら、北方戦役のときに、死んでいればよかったのかもしれない……」
 個人的に聞きたかったことが自然と口に出て、止まらなくなる。気分が暗くなる。
「灰のお兄さん……話を振ったのは僕だけど、そろそろ……ちょっと、そこまでにしてたほうがいいかも……」
「……あっ」
 しまったと思ったときには遅かった。
 強い力で押さえつけられる。
「っ……」
「教官!!」
 マクバーンに押さえつけられている俺を助けようと生徒たちが動こうとする。
「邪魔をするな、小僧ども」
 マクバーンの一睨みで生徒たちは動けなくなる。
 道化師の方はやばいとなっているし、これは、かなり怒っているよな。
「死ねばよかっただと? どう思われてるのか、今この状態を見てもお前は理解できないのか?」
「マク、バーン……」
「だったら答えてやる。お前がもし、命を落としてたと知ったら……世界を焼き尽くしてやる。お前がいない世界になど興味はない。何故不安になる? 俺は誰かに自分が身に着けていたものを渡したりしねぇよ」
 そう言いながらマクバーンは俺がいつも付けているペンダントを取り出す。
「渡したときに言ったはずなんだがな……これはお前がずっと俺のものであるという証だと」
「そ、それは……」
 そう言われても、不安だったのは確かだ。
 1年半も会えずに、そう選んでしまったのは自分だから仕方がないけれど、不安でどう思われているのだろうかと心配だったのは事実で。
「教官の相手って……」
「お前らは邪魔だ。おい、カンパネルラ。そいつら何処かに連れていけ」
 やれやれという仕草をするが、道化師は生徒たちとともに何処かへと姿を消す。
 それに慌てるが、いまだに抑え込まれているため、動くことはできない。
「マクバーン!!」
「危険はねぇよ。それよりも、話の続きをしようか、リィン?」
 何か死亡宣告をされた気分になったのは、仕方がないよな。


 死ねばよかったか。
 それを聞いて、怒りがこみ上げた。
 あれをリィンに渡したときに、お前は俺のものだと、言ったはずだと。周りに邪魔な奴らがいるが、そんなもの知るかと、構わずにリィンを押さえ込む。
 力強く押さえ込んでいるからか、それとも俺の怒りを知ったからなのか、リィンはビクリとしている。そんなリィンを助けようと動こうとする小僧どもに殺気を向ける。お前たちなどただ邪魔なだけだ。
 カンパネルラにいって、そいつらと何処かへと退場してもらう。リィンは焦るが、危険はない。
「他人より、まず自分の心配をしたらどうだ?」
「っ……マク、バーン……」
 不安そうに見上げてくるリィンの唇に自分の唇を重ねる。
 最初は軽く。徐々に深く、舌を絡めていく。リィンもそれに答えてくる。
「マクバーン……俺はまだ、マクバーンのものか……?」
「言っただろう。お前は俺のものだと。これがその証だと」
 リィンの目に溜まっている涙を拭い、リィンの首にかかっている、かつて自分が身につけていたものを手に取る。
「信用してなかったのか、お前は?」
「そうじゃない……ただ、自分はマクバーンが好むような強者じゃないからって……一人で考えて勝手に不安になって、北方戦役であんなことになって、もしここで死んでいたら、とか、色々と考えたら、どんどん不安が大きくなって……クロスベルでのタワーでの戦闘で、本気出せなくて、それで失望させたかもしれないとか思ったら、もういらないって言われても、仕方がないとか思って……」
「確かに戦うなら強者を好むが、タワーでお前が本気を出してこなかったのは確かに面白くなかったが、鬼の力が妙なことになっていることはわかったからな。星見の塔ではお前ちゃんと本気出しただろうが。あれは楽しめたぞ?」
「ヴァリマール呼んだ後、拗ねてなかったか……?」
「あぁ、あれか……折角楽しんでたのに、邪魔が入ったしなぁ? 内戦の時はあのデカブツ相手だと面白そうだと思っていたが、あのときはお前をはじめとした奴らを直接相手したほうが燃えてたからな。邪魔が入って拗ねたのは確かだな……」
 それを告げると、リィンは苦笑した。
 邪魔したのがあいつらというのも気に食わない一つだが。
「リィン……これだけは覚えていろ。お前はいつまでも俺のものだということを。それが嫌なら、俺があげたそれは捨てろ」
「そんなことしないよ。俺の支えの一つであったのは、確かなんだから」
「だったら不安になるなよ。あぁ、その身体に教え込んでおけば良いのか……」
 不安になるぐらいなら、その身体に俺のものだとさんざん教え込んでおいたほうが早そうだ。
 内戦の時はあの時だけだったしな、こっちも我慢の限界になりそうだしな。
「……え」
「前のように1回で済むと思うなよ? あの時は我慢したが、今回は我慢も手加減もしないぞ」
「いや、俺明日帰らないといけないんだが?」
「帝都から近いだろう? 最悪俺が送ってやるよ。だから、覚悟しろよ?」
 リィンは顔面蒼白になっているが、覚悟してもらわねぇとな。
 今度はきっちり教え込んでやろう。

 あの後逃げようとしたリィンを後ろから抱え込み、服を脱がしながらリィンが弱いところを攻めていく。
 服を脱がしていくうちに、リィンの胸ポケットに入っていた小さな袋に気づく。
「……リィン、これは何だ?」
「あっ…それ、は……マクバーンに渡せたら、渡そうと思って……んん……持ってきた、やつで……っぁ」
「開けるぞ?」
 リィンに赤い痕を残しながら聞くと、コクリコクリと頷く。
 開けると赤と灰が混じり合ったようなペンダントが入っていた。
「色合いがまるで俺とお前だな、クク」
 ぺろりと首筋を舐めるとピクリと体を震わせる。
 ペンダントを首にかけると、リィンはどこか安心したような顔をしている。
「なぜすぐに渡さなかった?」
「受け取って、もらえるか……不安だったから……っ。マクバーン……噛むなよ……ん」
 その首筋に噛み付く。
 お前が不安に思っているからだろうが。やはりその身体に教え込まねえといけないな、これは。
 リィンの身体に赤い痕を残しながらリィンが弱いところを攻める。その度にリィンの身体はピクリと震えている。

 首筋を噛まれてゾクリとした。
 このまま食い破ってくれという思いも浮かぶ。
「っあ、んん……」
「リィン」
 呼ばれて振り向くと唇が重なる。その間も弱いところを攻められ、ピクピクと震えてしまう。
 唇が離れ、ぺろりと舐められる。
 マクバーンの手が前に伸び、そのまま握られてしまう。自分でも対して触ったことがないところを触られると恥ずかしく思うけど、マクバーンの手は止まるどころか、攻め立てる。無意識に止めようとして咎められるように強く握られてしまう。
「ふぁ、あ……っん。はぁ……んん……」
「何止めようとしてるんだよ」
「んぁ、だって……あぁ……。マクバーン……手、離し、て……」
「そのままいけ」
 激しく攻め立てられ、そのまま果ててしまう。
 息を整える前にマクバーンの指が後ろの方へと移動し、指が侵入してくるのを感じる。
「狭いな。あれからやってないのか?」
「マクバーン以外、誰がいるんだよ……」
「お前を組み敷きたいとか思ってる奴らはいると思うぞ」
「ん……わかって、る……軍の施設とかに、赴いたときとか……そういう視線、感じたことはあるから……。でも俺は、マクバーン以外、いらな……んぁあ」
 中をかき回され、身体が跳ねる。
 中に入っている指も増やされ、かき回され、どんどん身体が熱くなってくる。
「リィン」
 自分を呼ぶマクバーンの声も熱くなっているような気がして、嬉しく感じる。
「マクバーン……」
 マクバーンの方に向き直し、その首に腕を回す。
 今度は自分からマクバーンの唇に自分の唇を重ねる。マクバーンに頭を固定され、貪られる。それが嬉しくて、首に回している腕に力を込める。
 激しいキスを何度もされ、何とかそれに答えようとするが、やはり翻弄されてしまう。
 キスに夢中になっていると、入っていたはずは指は抜かれ、代わりにマクバーンのモノが入ってきて逃げ腰になってしまうが、マクバーンに強く抱きしめられ勢いよくそれを叩き込まれる。
「っ……」
 痛みとそれ以外の感覚に襲われる。涙が溢れてきて、その涙に気づいたマクバーンが涙を拭ってくれた。
「大丈夫か? 流石にきついな。だが、手加減は一切しないからな」
「っあ、ん……!!」
 そう言われ、いっきに叩きつけられる。
 ガツガツと突き上げられ、マクバーンに縋り付くと、首筋を舐められる。ピクリと体が反応する。
「リィン、覚えておけ。始まりはどうであれ、俺はお前を手放す気はない。お前にだけだ、こんな感情が動くのは。他の奴らには抱いたことはない。お前にだけだ、リィン」

 俺だけに抱く感情だと、マクバーンに告げられ、嬉しさがこみ上げてくる。俺も、マクバーンにだけ抱く感情だと告げると、覚悟しろよとか言われたが、明日戻れないかもなという思いよりは、マクバーンとできる限り一緒にいたいという思いのほうが強く、膨れ上がっていた。
「どうせ何を言ったって止めてくれないんだろう?」
「まぁ、そうだな。不安がる奴がいるからな」
「うっ……」
 そう言われると否定できない。色々と考えすぎて不安がってたのは事実だし。またぐるぐると考えているとマクバーンに首筋に歯を立てられ痛みと、それ以外の何かが身体に走る。
「んぁ……っ……」
「余計なことは考えるな。今は俺だけを感じていろ」
 そう告げるとマクバーンはまた俺の弱い部分を刺激するように動きを再開する。
 そこからは散々鳴かされた記憶しかない。
 気づいたら朝で、マクバーンに抱きしめられている形で目が覚めた。こんなふうに寝ているマクバーンを見たのは初めてだから、少し嬉しいと思ってしまう。
 考えたら、あの一度きりで、その後に腰の痛みに耐えながら脱出したから、こんなにもゆっくりに過ごしたことなかったんだよな。
 マジマジと見つめていたら、マクバーンがいつの間にか起きていて、目が合いなんだかいたたまれない気持ちになってしまった。というか、恥ずかしい。
「くくっ、そんなに見つめてどうした?」
「いや、こんなふうに寝るんだとか見てた……始めて見た寝顔だったから……」
「俺のところに来ればいつでも見れるんだがな」
「それは……」
「まぁ、頑張ってみろ。お前との戦い合うのも嫌いじゃないからな」
「俺にとっては強敵なんだが……」
 それでも俺は俺が行きたい道を行くだけだ。それがマクバーンと戦い合うことになっても、それでも──。
「まぁ、今はまだ寝ろ。起きるには少し早いぞ」
 そういいマクバーンは更に俺を強く抱きしめ、また眠りに入り、それにつられて俺もまた眠りに入った。
 次に起きたのは昼前で、俺を心配する声で目が覚めたが腰が痛いのと身体のだるさがあり、立ち上がれずに渋々とマクバーンに行かせたが、何やら言い争いみたいなことをし始め、どうにか起き上がったが、俺を見たクルトたちが色気がどうとか言い始め、ゆっくりしてくださいとか言われてさっさと去っていった。
 その後そのままリーヴスに戻ったらしく、分校長からゆっくりしてくるといいとか数日休んでも構わないとか言われ、マクバーンがニヤリとか笑って俺やばいのではと感じたが、動けない状態のせいで逃げるに逃げられず、結局戻れたのが3日後だったとか──。
 マクバーンに文句を言ったが、覚悟しろよって言っただろうとか言われたり、まだ足りないとか言われたりと散々だった。
 あの時、マクバーンがどれだけ我慢して一度で終わらせたのがわかる数日間だった。

サイト掲載日 [2018年7月10日]
© 2018 唯菜
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開設:2014/02/13
移転:2017/06/17
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