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 マクバーンが俺に着いてきて約2週間が過ぎようとしていた。
 分校の生徒たちは少し慣れたのか、マクバーンを前よりは気にしなくなってきた。ミハイル少佐はいまだに慣れてない部分もあるのか、変な格好で止まってるところをよく見かけるが、ここは慣れてもらうしかなく、何度も心の中で謝るしかなかった。
 俺はというと、無茶をしないようにとマクバーンに色々と制限されながら過ごしていた。
 無茶をしたら、怒られたどころか、怒られて無茶をした覚えはないと言ったら本当に抱き潰されてしまい、数日間起き上がるのもできなかったので、仕方がない。
(俺を大事に思っていてくれるのは嬉しいんだが、まぁ、その……その後のことを考えたら……。抵抗したらそんなに元気があるならまだまだ大丈夫だなとか言われるし)
 ようやく起き上がれるようになったとき、生徒たちから色気がすごいとか言われたんだが、俺に色気なんてないだろうって言ったら、ため息つかれたんだが。マクバーンもため息ついていたな。
 ランディさんやトワ先輩にも色気がどうとか、ミハイル少佐にもなんか小言のようなこと言われたな。分校長にはその日も休めとか言われて強制的に宿舎に帰されてしまったが。
 俺に色気なんてないと思うんだが、考えてもわからないし、別なことに集中しよう。
 マクバーンはなんだかんだ言っても、分校での仕事関係でのことには口を出しては来ない。大抵口を出してくるのは俺が町の人達の頼みとか聞くときぐらいだ。
 俺が分校での仕事関係での準備を夜やっている間、マクバーンは俺の邪魔はせずに何か難しそうな本を読んでたり、寝てたりと様々だったが、俺がいつものようにアーベントタイムズを聞いていると、不機嫌そうな顔になって最後にクロチルダさんの俺たち宛のメッセージが入ってて、更に不機嫌になっていた。
 そう言えば、クロスベルでは捉えるように言われたとか言ってたな。
 気持ちはわかるんだが、機械にはあたらないで欲しい。壊されかけて必死で守ったんだからな、俺は。もう聞くなと言われたが、本校に通ってたときからのファンだったし、これを聞かないと落ち着かないというと、不機嫌になったがこれぐらいは許してくれ。
 再びまだ少し残っている仕事の準備をするべく、机に向かおうとすると、マクバーンに腕を引っ張られ、後ろから抱きしめられる。
「マクバーン?」
「深淵に言われなくてもわかってるつもりなんだがな、お前を泣かせるなと」
「マクバーン……。ユミルの時に俺が泣いたのはマクバーンのせいじゃないだろう? 俺が弱かったせいだ……」
「あの時のお前は追い詰められすぎてただけだろう。体調が悪いのも気付きもしない、お仲間の気配すら気付けもしない」
「うっ……」
「あぁ、そう言えば全部ぶちまけろと言ったが途中で止めたな、俺が。その後聞く機会がなかったが……この際全部聞きだすか」
 たしかにあの時は途中でマクバーンがもういいとか言って、途中で終わったが、今聞くのかと。
「まぁ、今は一番聞きたかったことだけ聞くか」
 マクバーンが一番聞きたかったこととは、どれのことだろうか。
「リィン、お前、なんでそんな妙なことになった? クロスベルの時から思っていたが」
「言わないとダメか?」
「言わないとお仲間の方に殴り込みに行くぞ。どうせあいつらは知ってるんだろう?」
「止めてくれ」
 これ、俺が言わなかったら絶対みんなのところに行くだろう。
 そうなればどうなるか想像ができない。それなら、俺の口から言ったほうがいいに決まっている。
 だから話した。約半年前の北方戦役で起きたことを。そして俺が思っていたことを──。
 マクバーンは黙って聞いていた。
「もしあのとき、そのまま死んでいたらどうなっていたんだろうか……マクバーンもいない、会えない……もういらないのかなとか、あのまま死んでいたらマクバーンは悲しんでくれたのかなとか……」
「リィン、くだらないことを考えるな。前にも言ったと思うが、お前が生きてないとこうやって触ることさえできないだろう。お前が知らないところで息絶えるぐらいなら、お前を喰らったほうがマシだ」
「もし……もし、俺が息絶えたら、俺を喰らってマクバーンの一部にして欲しい」
「お前がそれを望むなら、そうしてやるよ」
 そう言われ、首筋に歯を立てられた。
 痛みが走るが、その痛みさえもマクバーンが与えてくれたものだと思えば、なんてことはない。
「だがな、リィン。これだけは言っておくが、お前が生きているからこそ意味がある。お前が死ねば、俺はこの世界を焼き尽くす。お前がいない世界になど意味はない」
「それは止めてくれ……」
 冗談ではないだろうなと感じる。
 おそらくマクバーンはそれを実行してしまう。
「それが嫌なら、させたくないのなら、生きて俺のそばにいろ」
「そう、だな……」
 後ろから強く抱きしめてくるマクバーンの手に自分の手を重ねる。

「おーい、リィン。一緒に飲みに行かない、か……っと悪ぃ、邪魔したな」
 ガチャリとドアが開き、ランディさんが入ってきたが、俺たちの状況を見て、再びドアを閉めようとした。
 慌ててマクバーンの腕を離し、ランディさんの応対をする。
「邪魔じゃないですから!」
「いや、そっちの旦那はかなり不機嫌で殺されそうなんだけどな……」
「マクバーン……」
 確かに不機嫌だと明らかにわかる。殺気まで向けてるしな。
「一緒に呑まないかと思って声をかけたんだが」
「あ、もうこんな時間……」
「呑むのもいいが、リィン、その前に何か食べろ」
「もしかしてまだ夜食ってないのか?」
「えぇ、仕事の準備とかラジオ聞いてたら……マクバーン、頼むからラジオに当たるのは止めろよ」
 ラジオと聞いてまたマクバーンが不機嫌になり、ラジオに当たりそうだったため、先手を打ち、止める。
 舌打ちが聞こえたが──。
「アーベントタイムズ聞いてたのか。いいよな、あのラジオ。……って旦那、機嫌悪くないか?」
「えぇ、まぁ……色々ありまして……」
 マクバーンの不機嫌の理由がわからないランディさんは不思議そうだ。
 ミスティさんが結社の第二柱《蒼の深淵》クロチルダさんでマクバーンが追っている人物だと知らないから当たり前なんだが、とりあえずマクバーンの前でアーベントタイムズの話はしないほうがいいと言っておいた。
「よくわからねぇが、旦那の前では言わないほうがいいのはわかった。夜が終わってないなら、宿酒場で食べながら呑まないか? もちろん旦那も」
 マクバーンの方をちらりと見ると、行くようだったので、承諾した。
 それから三人で宿酒場へと向かい、夜食を食べつつ、雑談した。
 マクバーンの正体を知らない町の人達は俺にいつもついて歩いているマクバーンのことを最初は不審がっていたが、そのうち慣れたようで、今では普通に接していた。ただ、ロジーヌのことは分かっているようで、仕掛けたら面白いかもなとか言っていたな。止めたけど。
「そう言えば、ユミルでのあれは、わざとか?」
 ユミルと言われてピクリとしてしまう。
 あれとは、どれのことだろうか。
「酒か?」
「あぁ」
「酔わせてどうこうしようとしたのは確かだが、リィンから口移しで呑まされたのは想定外だったな」
 クク、と笑いながらマクバーンは答えてる。
 酒かと、あのときのことを思い出して頭を抱える。
「って、あれって計画的か!」
「クク、酔い潰すのが目的じゃなかったからすぐに度数の低いのを呑ませただろう? まぁ、その後のことは想定外だったがな」
「うっ……そもそも、あの場であんな……」
 その後のことや1ヶ月ぐらい分校に戻れなかったことやあれこれと思い出して、更に頭を抱える。そんな俺を見てマクバーンはクク、と笑っているし、ランディさんは謝ってるのが聞こえるし。
「また口移しで呑ませてくれてもいいんだが?」
「誰がするか!」
「とりあえず、人前でやるのは止めておいたほうがいいと思うぞ。あれは、やばい」
 ランディさん、何がやばいんだろうか。
 マクバーンもわかったらしく、たしかにやばいなとか言ってるし。
「何がやばいんだ?」
 そんなことを聞く俺に二人にジト目で見られる。なぜだろうか。
 ため息を二人揃ってつかないでほしいんだが。
「大変だな、旦那」
「バカな奴らはどこにでもいるが、大抵は殺気を向ければ対処できるが、以前犯罪級の奴らがいてな、そいつらは始末した」
「それはまた……」
 二人とも何の話をしてるんだろうか。
 始末したってなんのことだ。
「お前の色気にやられた奴らのことだ」
「色気? 俺にそんなのがあるわけないだろう」
 そう言うとまた二人してため息をつかれた。
 本当に何なんだよ。男の俺に色気なんてあるか。マクバーンが飲んでいた酒が入ったグラスを手に取りそれを一気に呑み干す。
「おい、それ度数が高い酒なんだが……」
「マクバーンのバカ……」
 そう言った後の記憶はない。

 机に伏せ動かなくなったリィンを見て、ため息をつく。
 そんなリィンの髪を梳くように撫でる。
「ずっと疑問に思ってたんだが……なぜリィンなんだ?」
「それに理由が必要か?」
「強者をあんたなら好みそうだからな」
 確かに強者を好むが、それは戦う相手ならの話だ。
「内戦の時に出会ったんだろう? 敵同士として出会ったはずの二人が、なんでだろうなってずっと疑問だったんだよな」
「こいつと一度話す機会があったときに、襲った。って言ったらどうする?」
 それを聞いた戦鬼の小娘の兄貴だったか。口を開いて襲ったってとか聞こえてくる。
 事実だが。
「冗談……だよ、な?」
「クク、どうだろうな?」
 俺は冗談言わないが。
 あの時、パンタグリュエルに招待されたリィンが俺の部屋を訪ねてきたときに、襲ったのは事実だが、抵抗されれば止めるつもりだったが、まさかあの時、襲われたはずのリィンからキスされるとは思わないよな。
 そう告げたら、戦鬼の小娘の兄貴は更に口を開いて呆気に取られていた。
「いやいや、なんでそれでそういう流れになるんだ!?」
「さぁな。むしろ俺とリィンだからこそ、かもしれんないぞ」
 ダウンしたリィンを抱きかかえ、そう言いながら店を後にした。
 店を出たときに、冷たい風に当たったためか、リィンが目を開ける。
「ん……マク、バーン……?」
「目が覚めたか?」
「マクバーン……」
 首に手を回して擦り寄ってくる。
「……バカマクバーン……」
「バカとは何だ、バカとは」
 バカと言いながらいつもより甘えて来るリィンの頭を撫でる。
「俺がわからない話してた……」
 色気がどうとかの話のことか。
 リィンのことなんだが、こいつ自身じゃわからないんだろうな。
「……いじけたのか?」
 何も言わずに首に回された手に力が込められた。
 そうか、いじけたのか。
 そんなリィンに軽くキスをする。
「おたくら、店の出入り口で何してんだよ……」
 残っていたはずの戦鬼の小娘の兄貴が店から出てきてこちらを見ていた。
「マクバーンは、俺の……」
「クク、そうだな、お前のだな。お前は俺のだろう?」
 コクリと頷くリィンに再度キスをすると嬉しそうにする。
 戦鬼の小娘の兄貴は放置でそのまま宿舎に戻るために宿舎に足を向ける。まぁ、戻る場所は同じだがな。
「……あ~……さっきの話、なんとなくわかったわ。たしかにあの二人ならおかしくねえかもなぁ……」
 と頭を掻きながら納得していた戦鬼の小娘の兄貴がいたのは知らねえ。
「独占欲が強いのは旦那のほうかと思ったら、リィンのほうも強かったんだな」
サイト掲載日 [2018年1月10日]
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開設:2014/02/13
移転:2017/06/17
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