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カレイジャスの甲板でオリヴァルトやトヴァル達と今後のことを話していると、目の前にあの蒼い騎神が現れた。
それは帝国解放戦線リーダー《C》が乗る騎神・オルディーネで──。
「…………!?」
攻撃を仕掛けてくるのかと思えば、オルディーネからクロウが降りてきた。そして、身構えてるリィンを力強く引き寄せ、抱き締める。
「ちょ…ちょっと……!?」
「あ~…この感触が、懐かしい……」
クロウは周りを気にせずに、リィンを思う存分に堪能し始めた。リィンはそんなことよりも、何故ここに来たのかとか、何故今抱き締められているのかとか、警報が鳴らなかったとか、オリヴァルトたちもいるのにとか、色々と混乱していた。
というか、誰か助けてくれと思っているのだが、オリヴァルトは何故か二人を見てニヤリと笑みを浮かべてて助けてくれる気配は全くなく、トヴァル達もリィンが帝国解放戦線のリーダー《C》であるクロウに抱き締められている状態では手が出せないのだろう、助けは期待できなかった。
「もう、いい加減に……」
「ん、もうちょいな?」
押しのけようとするが、クロウはびくともせず、それどころか抱き締める力が強くなり、若干息苦しい。
「リィン」
呼ばれて睨みつけてやろうと顔を上げると唇が塞がれる。──クロウの唇で。
それを見ていたオリヴァルトが「若いっていいねぇ」とか呟いてるのが聞こえてくる。
唇はすぐに離れていったが、リィンは固まっていた。
「おーい、リィン?」
反応がなくなってしまったリィンを心配したのか、リィンの目の前でクロウは手をひらひらと振る。
しばらくしてようやく我に返ったリィンは、涙目でクロウを思いっきり殴った。
クロウを殴り、解放されたが未だに涙目のリィンは謝ってくるあの場に居た人物に対して、全て無視を決め込んでおり、何も反応を示さない。
クロウはクロウで未だにカレイジャスに滞在しており、ブリッジで寛いでいた。そして何故かは分からないが、オリヴァルトと雑談しているという、頭が痛くなるような状況だ。
「そういえば、君はどうしてここに来たのかな?」
「今日ぐらいはリィンと過ごさせろ! と言ったら、拒否されたから強行突破してきた」
「あぁ…今日は聖誕祭か──。破壊行為とかしないと誓ってくれるなら、私は別に構わないよ」
「お、本当か? 話が分かる皇子さんだなぁ!」
リィンの知らない間に話が進んでおり、焦る。
「殿下、何言ってるんですか!?」
「わざわざ会いに来てくれたんだろう? なら君はそれに答たまえ」
「殿下!?」
「そういうことで……リィンの部屋に行くか」
クロウはリィンを簡単に担ぎ上げ、口笛を吹きながらリィンの部屋へと向かった。
最初は部屋の場所を教えようとしなかったリィンだったが、教えないならここで押し倒すぞと言われ、それは止めてほしくて、リィンは仕方なく部屋の場所を教えた。
満足気に口笛を吹くクロウに何かやってやろうかと思ったが、落とされたらたまったものじゃないと思い、結局何もできないまま自分の部屋に到着し、ベッドの上に降ろされた。
リィンはなるべくクロウと距離を取ろうとするのだが、容易く引き戻される。
「逃げるなよ」
「逃げて…なんか……」
「逃げてるだろう? そんなに俺と一緒は嫌か?」
それに対して、リィンは何も言わず、黙る。
リィンの脳裏を掠めたのは二ヶ月前に言われた言葉。
「……全部、嘘だって言った……なのに何で……?」
「リィン……」
膝を抱え俯く。
顔が隠れているため表情は見えないが、その表情はおそらく暗く、悲しみに包まれていることだろう。
「全部嘘だったってことは、あれも嘘だったんだろう?」
その問いかけに答えないクロウに対して、リィンは俯いてた顔を上げ、近くにあった枕をクロウの顔面に投げた。クロウはそれを避けることなく顔面で受け止める。
「クロウの馬鹿野郎!!」
そういうと、リィンは部屋から出て行った。出て行くリィンの目には涙が溜まっていた。
クロウは頭を掻きながら、リィンの後を追った。
「…………あれだけは嘘じゃないさ」
(クロウの馬鹿……)
リィンは誰もいない甲板で、まっすぐ空を眺めながら、静かに涙を流していた。
しばらくして、甲板のドアが開く音がしたが、リィンはそちらを向くことなく、空を眺めたままだった。
「一人で泣くなって」
そう言いながら、リィンを後ろから抱き締めた人物は、やはりというべきか、クロウだった。
リィンが流していた涙を拭う。
「……クロウの…馬鹿……。嘘つき……俺が…どんな想いを…した、か……っ……」
「分かっているさ……痛いほどに、な……」
クロウはリィンを自分のほうへ向かせ、拭ったはずの涙はまた流れており、そんなリィンを優しく抱き締める。
「リィン、──」
「嘘だ、信じない……」
「本当だって。それだけは信じろよ」
耳元で囁かれた言葉に、リィンは信じられずにいた。そんなリィンに苦笑しながら、クロウは抱く力を込める。
もう一度同じ言葉を囁き、深い口付けをした。
pixiv [2013年12月31日]
© 2013 唯菜
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