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バレンタイン

 俺が台所である材料の用意をしていると、マクバーンと一緒にいたはずのクーリオがお気に入りの犬のぬいぐるみを抱きかかえながらやってきた。
「ママ、何か作るの?」
 不思議そうに首を傾けながら聞いてくる。
「今日はチョコレートを使ったお菓子を作る予定だよ」
「ちょこれーと?」
 クーリオはチョコレートと聞いてさらに首を傾けている。
 そういえば、チョコレートは食べたことなかったかと思い、用意していたチョコレートを少し割る。
「さすがにチョコレートはパパとママは作れないから、市販のものだけど、食べてみるか? 甘くて美味しいぞ?」
 そう言いながら自分がまずは食べて、安全なものだよとクーリオに示すと、少し匂いを嗅いだ後、恐る恐る口に入れる。口に含んですぐにその顔が喜びに満ちていく。
「美味しいだろう?」
 クーリオはこくりこくりと頷き、しばらくチョコレートの甘さと美味しさを味わっていた。
 そんなクーリオにもう一欠片渡すと、食べてもいいのかなという顔をしていたため、食べてもいいよと合図をすると、嬉しそうにまた口にチョコレートを含んでいた。
 そんなクーリオを見ながら、今から作るお菓子の分量をはかっていく。
 本当は何か買って渡すつもりだったのだが、今年はクーリオがいるということで自分で作るかと思った。クロウに渡すならクーリオにも渡さないと可哀想だしな。
「さてと、作るか」
「僕も何かお手伝いできることある?」
「それじゃ、材料混ざるのを手伝ってもらおうかな」
「うん!」
 それからクーリオにも手伝ってもらいながら、お菓子を作っていった。
 クーリオには手伝えるのが嬉しいのか、満足そうにしていた。


 数分後、無事に焼け出来上がったカップケーキをクーリオはじーって見つめていた。
「くー、味見してみるか?」
「えとえと……パパ待ってる!」
 そういいながらも興味深そうに見ているクーリオに、少し切り分けてあげる。
「手伝ってもらったからな、少し先に食べていいよ」
「いいの?」
「ああ。味見、な?」
 そう言いながら俺も切り分けたカップケーキを口に放り込む。それを見てクーリオも口に放り込んだ。
「美味しいか?」
 こくりこくりと頷きながら味わって食べていた。
「後は、パパが帰ってきてからだな」
「マク兄ちゃんの分もある?」
「ちゃんとあるから、後でクーリオが渡してくれるか?」
「うん!」
 本当にマクバーンには懐いているなと思う。俺たちからしたらマクバーンのほうが怖いと思うが、クーリオにとってはそれは当てはまらないのは充分にわかっている。
「いい匂いがしてるじゃねぇか」
「あ、マク兄ちゃん!!」
 寝てたはずのマクバーンがいつの間にか背後に立っていた。
 さすがにマクバーンに背後に立たれると、怖いものがあるんだが……。
「マクバーン、後ろに立つな」
「くくっ、別にいいじゃねぇか」
 そう言いながらお菓子に手を伸ばそうとしているのを見て、手を叩く。
「おい……」
「マク兄ちゃん、パパが帰ってくるまで食べちゃダメなの」
「仕方がねぇ、それまで我慢するか。あいつが帰ってくるまでもう一眠りするか」
 いつものようにダルそうにあくびをしながらクーリオを抱きかかえて部屋から出て行く。
 クーリオもしばらくすれば昼寝の時間には遅いが、するだろう。
「さてと、俺は少し釣りでもしていようかな」
 そう思い、クロウが帰ってくるまで釣りをしていようと思い、家のほとりにあるそれほど大きくない湖で釣りを始めた。
 今でもこうやって時間ができると釣りを楽しんでいる。最近はクーリオも興味が出てきたみたいで、今度誘ってみるかと思う。
 しばらく釣りを楽しんでいると、クロウが仕事を終え、帰ってきた。
「おかえり、クロウ」
「あぁ……ただいま、リィン。リオは?」
「今は寝てるかもな。さっきまでは一緒にお菓子作ってたんだが、マクバーンがもう一眠りするかとか言ってクーリオも連れて行ったから」
 そう言うと、少し拗ねたような表情をし、抱きついてきた。そんなクロウの頭を撫でると嬉しそうにするから、何回でも撫でてしまう。
 普段は俺が撫でられる側だけど、こうやってクロウを撫でるのも、好きだな。
「今日は何の菓子作ったんだ?」
「……内緒」
 絶対わかっているだろう。何のお菓子を作ったのかって。
 今日が何の日なのかとか、前から言って用意させようとさせてたんだから。
「ククッ、楽しみにしとくかね」
 腰を引き寄せられながら言われ、反射的に拳を入れてしまったのは仕方がないよな。



 おやつの時間になり、まだ眠そうに起きてきたクーリオとマクバーン。
 クーリオにさっき一緒に作ったカップケーキを渡す。クーリオにはマクバーンのと一緒に。俺はクロウに手渡した。
「僕も手伝ったんだよ」
 そう言いながらマクバーンに渡していた。
 クーリオは意味がわかっていないだろうが、マクバーンはわかっているだろうな。
「えへへ、マク兄ちゃん、一緒に食べよ」
「あぁ。一緒に、な」
 嬉しそうにしているクーリオの頭を撫でるマクバーン。
 クロウは飲み物を用意しているが、何かぶつぶつ言ってるんだが、どうせマクバーンにとびきり熱い紅茶でも入れるつもりだろう。いつもそれでぬるいって言われてるのにな。
 俺とクーリオには普通に紅茶を置いていき、マクバーンにはとびきり熱そうな紅茶を置いていっていたが、普通にマクバーンは飲み干していた。いつもの様にぬるいと言っていたが──。クロウは悔しそうにしていたが、いつものことなので放っておこう。


 そして後日のホワイトデーに、お返しとばかりに押し倒されて翌日動けなくて1日動けずにいて、クーリオに心配をかけてしまい、クロウに八つ当たりしてしまった。でもそれは仕方がないよな。
 どうりでバレンタインデーのとき、すんなり諦めたなと思えばと思い返し、ガクリと肩を落とす。そういえば、あの時一ヶ月後、楽しみにしてろよとか何か言われたな。
 ちなみにクーリオにはクロウからは新しい本、マクバーンからは大きなぬいぐるみをもらったらしい。
 バレンタインデーやホワイトデーがどんな日なのかまだわかっていないみたいだが、嬉しそうにしていた。
 今日もなんだかんだで平和だ。──俺はベッドの中だけどな。

サイト掲載日 [2016年4月25日]
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移転:2017/06/17
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