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夏祭り
地元で夏祭りがあると聞き、俺とクロウは行くつもりだったけれど、クーリオのことを考えたら心配になる。
祭りを楽しんでもらいたいけれど、クーリオはまだ他人を怖がっている時期だ。行きたそうではあるが、まだまだ恐怖のほうが強いのだろうな。
「クーリオ、俺と回るか? 好きなモノ買ってやるぞ?」
しょんぼりとしていたクーリオの頭を撫でながらマクバーンが言う。
クーリオを保護してしばらくして、マクバーンが家に居座り始めた。怖がると思っていたクーリオは、何故かマクバーンにすぐに懐き、今では俺達と同様に、マクバーンでも安心できる存在になっていた。
「お前、まだいたのか……」
「あ? 別に構わないだろう? ちゃんと生活費なら払ってるだろう?」
「ぐっ……」
そう言われるとクロウは何も言えずに、うなだれている。確かにちゃんと生活費貰ってるからな。余裕があるほどに。
さすがに多すぎて最初は出しすぎだと言ったことはあるが──。
「マクお兄ちゃんも、一緒……?」
「クーリオはどうしてほしい?」
そう聞かれ、クーリオは首を傾けながら俺達の方をみる。
自分が思っていることを言ってもいいんだが、クーリオはなかなか俺たちにもマクバーンにも自分からこうしてほしいとかあまり言わない。
「くーはどうしてもらいたいんだ?」
「ん~と…えっと……。パパとママと、マクお兄ちゃんと一緒に行きたい……いい?」
不安そうに俺たちの服をぎゅっと強く握りしめてこちらを見つめている。
そんなに不安そうにしなくても大丈夫なのにな。
「あぁ、いいぞ。クロウもいいよな?」
「リオが望む通りにしたらいい」
「パパ、ママ、ありがとう。マクお兄ちゃんも一緒~」
マクバーンに抱きついてるクーリオを見ると少し複雑な気持ちにもなるが、もしもの場合でもマクバーンがいれば簡単に対処できるだろうしな。
クロウもそう思っているんだろうが、俺以上に複雑な気持ちになっているのかもな。
「リオはなんであんな野郎に……」
俺に抱きつきながらそうブツブツと言っている。
「くーが懐いているのだからいいじゃないか。それに、マクバーンがいればもしもの場合なんて考えたくないけど、その時は安心だろう?」
「わかってるんだが……それとこれとは……」
親として複雑なんだろうな。俺もそうだけど──。
それにマクバーンに何か言ったところで、無意味なのはわかっているしな。
今は目の前に迫っている夏祭りのことを考えたほうがいいだろう。クーリオが怖がらずに楽しめれるように。
夜が近付き、祭りがそろそろ始まるころ、クロウがクーリオに浴衣を着せていた。いつもの服と違ってて不思議なのか、首を傾けている。
そういえば浴衣見たことも着たこともなかったか。
「よし、リオもういいぞ」
「ありがとう、パパ! ママ、似合う?」
浴衣を広げて見せるクーリオの頭を撫でる。
「あぁ、似合うぞ」
「えへへ」
「クーリオ、似合ってるぞ」
いつの間にか何処かへ行ってたはずのマクバーンがそこにいた。
「マクお兄ちゃんも浴衣?」
「クーリオとお揃いだろう?」
「おそろい~」
クーリオは嬉しそうにマクバーンにぎゅっとし、マクバーンはそんなクーリオを抱きかかえる。
どこに行ってたのかと思ったが、浴衣のためか。その浴衣はどこで手に入れたのか気になるが、深く考えないことにするか。普段ここにいない間は何やっているのか知らないしな。
「お前も着るか? リオがお揃いって喜ぶんじゃねぇ?」
「そうだな。クロウも着るんだろう?」
「あぁ、俺も着る。あいつとお揃いっていうのは気に食わないが…リオのためだ」
苦笑しながらクロウの頭を撫でる。
そうするとクロウは、甘えるように俺に擦り寄ってくる。俺もクロウにはよく甘えるけれど、クロウが誰かに甘えるとかは少ない。だから、クロウが俺に甘えてくるのは俺だけの特権だと思っている。
「さて、浴衣に着替えるか」
「そうだな」
その後、俺もクロウも浴衣に着替え、喜ぶクーリオとマクバーンとともに夏祭りに参加するため、街へ赴いた。
街はいつも以上に賑わい、先ほどまで喜んでいたクーリオは楽しいよりも恐怖が先に来てしまったのか、マクバーンに抱きかかえられてビクビクしていた。
やっぱりまだ人が怖いか。知らない人ばかりっていうのもあるだろうし、後は初めての雰囲気だからびっくりしたかな。
隣では、クロウの目が据わっていて機嫌は悪いけれど、いつものことだから気にしないでおこう。
しばらくすると落ち着いてきたのか、マクバーンに抱きかかえられてだが楽しみ始めたクーリオに、ほっと胸を撫で下ろす。
離れないとわかっていても、念のためクーリオに離れないように告げる。クーリオは何度も頷き、抱きかかえているマクバーンにしがみつく。
何があってもマクバーンは離さないだろうと核心があるから安心だ。俺達も目を離すことはしないが。
「お前たちはお前たちで楽しんできてもいいぞ?」
「いや、流石にマクバーンにだけくーをみてもらうわけにもいかないだろうから一緒にいくよ」
そう言うと嬉しそうに笑うクーリオの頭を撫でてやる。
クロウも一緒に行動するというのには同意してくるが、機嫌は悪いままだ。仕方がないから、ある程度はクロウの好きにさせておこう。少しでも機嫌が良くなればいいが。
後ろから抱きしめてくるクロウに苦笑する。
マクバーンは俺を後ろから抱きしめてるクロウを見て楽しそうに笑っている。後でからかうつもりかもしれないな。
後のことを思うと頭が痛くなるが、相手がマクバーンということもあり、何も言わない。
しばらく雰囲気に慣れさせるために出店を見ながら町を歩く。
徐々に慣れてきたクーリオは出店で出されている食べ物に興味が出てきたらしいが、欲しいとは言わない。まだ俺たち以外が作ったものはなかなか食べようとしないからな。
それがわかっている俺たちは、まずは俺たちが食べ、その後にクーリオが食べるようにしてやる。そうすると警戒はしているがおずおずとそれを口にする。気に入ったのか、美味しそうにもぐもぐと食べている。
「美味しいか、リオ?」
「うん! 美味しいよ、パパ」
クーリオは少しずつ食べながら俺たちにも渡しながら、美味しそうに食べる。
普段はしない歩き食いをしながら、気になった食べ物やクーリオが気になって興味が沸いてる玩具を買っていく。
「そろそろ、花火の時間だな」
「……花火?」
「おぅ、綺麗だぞ」
「……綺麗なの?」
首を傾けながらクーリオはきょとんとしたような顔でこちらを見ている。そんなクーリオの頭を苦笑しながらクロウは撫でている。花火という言葉自体、聞いたことがないクーリオにはどういうものかわからないだろうな。
花火を見るために花火が見える場所へと移動する。そこには多くの人達が集まってて今か今かと花火が上がるのを待っている。
しばらくして花火が上がりだすが、音にびっくりしたクーリオが怯えて俺に抱きついてくる。そんなクーリオを抱き上げ、大丈夫だよと声をかけるが、クーリオは涙目で俺にしがみつき、花火のほうを見ない。
「音にびっくりしたか、クーリオ」
「どこに行ってたんだ、マクバーン?」
「食いもん買ってた」
いつの間にかいなくなっていたマクバーンにそう問いかけると、ほれと言われ、渡された袋の中には出店で出されていた食べ物がいくつか入っていた。
「誰が食べるんだよ……」
流石に多すぎではと思う。
でもふと気づく。マクバーンが買ってきた出店の食べ物はどれもクーリオが気に入りよく食べていたものだった。
「あんた、ホント……リオのこと気に入ってるんだな」
ジト目で言っているクロウに対して、マクバーンはいつもの様に笑っているだけだ。
マクバーンは袋を俺たちに押し付け、野暮用とか言い、離れていった。
「俺たちは花火を楽しもうぜ。と言っても……リオ? まだ花火怖いか?」
いまだに花火が上がるたびにビクビクして俺にしがみついてるクーリオの頭をクロウが撫でながら聞くと同時に、また花火が上がり、ビクリと体を震わせて両耳を塞ぐ。
「ん~…まだ早かったか?」
「初めて見るだろうしな。でもほら、クー? 綺麗で見ないのはもったいないぞ?」
そう言ってもクーリオはふるふると首を振ると耳を塞いだままで、花火を見ようとしない。
俺は体勢を少し変え、クーリオから少し花火が見えるようにしてやる。
「クー、耳は抑えててもいいから、花火を見てみろ。綺麗だぞ」
「そうだぞ、リオ。綺麗だから見てみろ。こういう時にしか見れないんだからな?」
クーリオは恐る恐る耳を塞いだまま、花火を見る。
ちょうどたくさん上がっている時で、それを見たクーリオは目を輝かせていた。
「綺麗だろう?」
コクリコクリと頷くクーリオは花火を見るのに夢中になった。
まだ耳を塞いだままだけど、連れて来てよかったかな。こうやって花火を見せることも出来たし。
徐々に慣れていったクーリオは音にも慣れたのか、耳を塞ぐのを止めていた。最後はになるにつれて、花火に魅入っていた。
打ち上げが終わると、少し寂しそうにしてたが、また来年もあることを教えると、来年も見に行こうと約束し、帰路につく。その間マクバーンは帰ってこなかったが、何やってるんだろうな。
「マクお兄ちゃんはどこ行ったの?」
「どこ行ったんだろうな?」
「まぁ、あいつのことだからそのうち帰ってくるだろう。ほら早く帰って寝ようぜ。遅くなっちまうからな」
クロウは何か思い当たるんだろうな。何も言わないのは、俺かクーリオ関係か──。
家に戻る最中にクーリオは疲れたのかうとうとしていたが、やがて完全に寝入ってしまう。
「来年もまた行こうな?」
「そうだな、リオと約束したしな」
「あぁ」
また来年、三人で──四人になりそうだけど、行けたらいいなと願いながら、俺たちは家へと足を向ける。
「あいつらが楽しんでいるのに、無粋な真似するんじゃねぇよ」
「くっ…なぜバレた!!」
俺が対峙しているのは祭りに乗じてクーリオを狙っている奴ら。おそらくあの施設の人間どもか、それ関係の奴らだろう。
人形兵器もいるが、どれも俺の敵ではない。
「お前らの気配など、俺がわからないわけ無いだろう。うまく隠れたつもりだっただろうがな?」
他の奴らが巻き込まれようがどうなろうが、俺には関係ないが、あいつらが絡んでいるのなら別だ。
蒼の小僧はこいつらに気付いていただろうが、あいつはあそこにいたほうがいい。
「くそ!!」
対峙していた奴らがまとめて俺に銃を構えるが、そんなものは灰にしてやる。
いや、灰すらも残さずに、こいつらも含めて、燃やし尽くしてやる。
サイト掲載日 [2015年11月1日]
© 2015 唯菜
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