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父の日
クーリオが俺の服をその小さな手で引っ張り、俺は家事を止めてクーリオの目線に合わせるために腰を下ろす。
「どうした、くー?」
「あのね、ママ……パパがほしい物って、何かあるのかな?」
俺にそっくりだという首を傾ける仕草をしながらクーリオは聞いてくる。
何かプレゼントしたいのだろうか。
そういえば、そろそろ父の日かとわかり、一月前の母の日には俺にプレゼントしてくれたことを思い出す。だから父の日にもちゃんとプレゼントしようとしてるんだろうな。
「……父の日のプレゼントか?」
そう言うとクーリオはコクリと頷く。
「パパに何あげたらいいのか、わかんなくて……お小遣いで買える範囲で考えてるんだけど、わかんなくて……」
そう言いながらしょんぼりしていくクーリオの頭を撫でる。
「そうだな……少し街に行ってみるか? 何か思いつくかもしれないしな」
その小さな手はブルブルと微かに震えている。
母の日にも街へ行く前は震えていたと聞いた。だから本当は怖いのに、街に出てまで俺へのプレゼントを買ったことに、愛しさが込み上がる。
クーリオに大丈夫と言いながら抱きしめる。
その時、用事とかで出かけていたクロウが戻ってきた。
「おう、どうした?」
「あ、おかえり、クロウ」
「パパ、おかえりなさい~」
「ただいま、リィン、リオ」
俺ごとクーリオを抱きしめて、ただいまの挨拶と一緒に、俺とクーリオにキスをする。
これはもう日常と化している。クーリオを引き取った時はやめようと止めたけど、もう遅いだろうって言われ、クーリオも嬉しそうにするから大人しく受け入れることにした。
「少し街に出かけようかと思ってな」
「二人だけで出かける気か? 俺も行く。お前ら二人だけじゃ心配だし」
「ただ街に行くだけだが……」
「俺も行く」
これは引かないだろうなとおもい、クーリオもこくりこくりと頷いたことから、クロウも一緒に出かけることになった。
街につく間、クーリオはクロウに肩車されて嬉しそうにしていた。
さすがに街についたらやっぱり人が怖いんだろうな。クロウに抱きついている。
「あいつらはカボチャだぜ、リオ」
怖がっているクーリオにあれはカボチャだと言いながらあやしている。
なんでいつもカボチャになるんだろうと思いながら子供をあやすのはクロウのほうがうまいなと思う。学生の時もよく子供相手に遊んでいたしな。
「それで、街には何しに来たんだ?」
クーリオが落ち着いてきた頃にクロウが聞いてきた。
そういえば、街に行くとは言ったけど、目的は言ってなかったな。言ってもいいのかどうか迷ったが、その前にクーリオが答えた。
「あのねあのね、父の日だから、パパに何かあげたかったの。でもね、何あげていいかわからなくて……」
「だから、街に行ってみて、いろいろ見て回ったらどうかと思ってな」
しょんぼりしていくクーリオを撫でながらそう言うと、クロウは目を見開いた。
「俺はお前らがいるだけで、満足なのにな」
「それでも、くーは何かクロウにあげたいんだろう」
「ま、とりあえず街まわってみるかね」
それからしばらく街を回ってみても、なかなか決まらずに徐々にクーリオの表情が暗くなっていく。
そんなクーリオを撫でながらクロウは慰めている。
「決まらないなら、家に帰って一緒にご飯でも作るか? リオが手伝ってくれるならパパ嬉しいぞ」
「本当?」
「あぁ、そうするか?」
「うん! パパとママと一緒にご飯作る!!」
「あぁ、三人で作ろうか」
クーリオの表情が明るくなる。
家に戻り三人で食事の用意をする。包丁で切る作業はさすがにまだクーリオには危険なため、簡単な材料を混ぜたりこねたりすることしかやらせることはできないけれど、それでも嬉しそうにするクーリオを見ると、俺もクロウも幸せな気持ちになる。
後日、やっぱり残せるものを上げたかったらしいクーリオはクロウに万年筆をプレゼントしていた。
クロウは気にしなくてもいいのにとか言いながらそれを受け取り、嬉しそうにしていた。
「幸せ、だな」
「そうだな」
真ん中で寝ているクーリオを撫でながら、それに答える。
「お前もありがとうな」
その言葉に、俺はキスを送る。
サイト掲載日 [2015年6月22日]
© 2015 唯菜
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