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昼食を終えてソファに座りながら僕はうとうとしていた。お腹いっぱいに食べたご飯、暖かい部屋、隣にはママが座っていて、時々優しく頭を撫でてくれる。ここは安全で、痛い事もされない。だから眠気がきても困ることはない。

「くー、ベッドに行く?」

黒髪を揺らしてママが問いかけてくる。薄紫色の瞳はきらきらと輝いていて綺麗だ。
パパもそう思っているらしく、僕と同じことをママに言っていた。
ママの言葉に頭を振って否定する。ベッドよりもここに居たいと。

「……ママといる」
「そう、わかった」

くすくすと笑い、また頭を撫でてくれた。その所為か眠気が強くなった気がする。
頭が横に揺れてママの身体に当たって止まった。頬に体温が伝わってくる。
ママの匂いがして安心して薄く開いていた瞳が閉じた。

どれぐらい優しい温もりを感じていただろう、ふと室内の空気が変わった気がして僕は閉じていた目を開けた。
見慣れた室内かと思ったが、そこは全く違った部屋になっていた。
ソファに座っていることは変わっていない、隣にはママの気配がある。部屋だけが何故か違う。
隣にママがいるので慌てる必要はないと言い聞かせてふと、おかしいと感じた。
ママを見上げようとして顔を横にすると、ふさふさとした柔らかそうな毛の塊が見えたからだ。
まるで動物の尻尾のような形に首を傾げる。
ゆらゆら揺れていた。僕の目の前で。
部屋の異変も気になるけど、ふさふさとした毛の方に興味を引かれてしまう。怖い物には見えない。
そっと指を出して軽く触ってみる。予想していた以上に柔らかい。だからつい揺れていたそれを握ってしまった。

「な、な、なに?!」

隣でママが叫んでいる。寝ぼけているように声が掠れていた。
僕が上を見ると目を丸くさせた顔がある。不思議なことにママなのに、ママの頭に見慣れない三角があった。
手にしているふさふさと似た毛と同じで柔らかそうだ。

「ママ?」
「えっ、ママって俺のこと?」

僕にとってママは一人しかいないから、その言葉に頷く。だけど違和感に首を傾げた。
だから確認するように問いかける。

「クーリオのママでしよう?」

パパが付けてくれた名前。初めて貰ったプレゼント。
じっと見つめるとママは困った顔をして躊躇いながら頭を撫でてくれた。
いつものと変わらないのに肯定してくれないママに僕は首をまた傾げる。

「クーリオのママじゃないの?」

匂いも姿も気配もママと同じなのに、本能が違うと囁いていた。でもきらきらと輝く薄紫色はママと同じで優しそうな色をしている。

「どうしたリィン?!」

慌てたような男の声が聞こえてきて部屋に駆け込んできた。銀色の髪に夕日のような瞳。
パパだった。だけど不思議なことにママと同じように頭に三角の白いふさふさとした二対の飾りと、お尻からふさふさとした長い毛がある。

「パパ?」

駆け込んできたパパがこちらを見て固まっていた。もう一度パパと声を掛けたらママの方へと向かっていくと、肩を掴んで叫んでいた。

「いつ産んだ?!」
「う、産んでないからな!!」

似たような光景を見た気がして僕はパパとママの姿を見つめる。見ていて気付いたが、ふさふさとしているのは動物の耳と尻尾のようだ。
毛の柔らかさに手にしていた黒い尻尾が手放せない。つい頬に近づけてその柔らかさを堪能していたら、二つの視線を感じた。

「どこから入って来たんだ?」
「わからない。ソファで寝てたら、隣にいつのまにか居たから」


困惑した二人に僕もじっと見つめる。パパとママに似ているけど、僕のパパとママではないのは会話を聞いていてわかった。
でも二人の匂いも気配も同じで優しそうだから、警戒心が湧かない。

「あー、お前さんのパパとママがどこにいるか分かるか?」
「わからない。眠くて目を閉じて、また開けたらここにいた」

先程の出来事を考えながら口にする。パパとママの元に戻れるのか不安を感じるが、二人なら見つけてくれそうなきがした。それに最近はマクお兄ちゃんもいるから、パパが大抵の事は大丈夫だと言っていた。だからすぐに迎えに来てくれるかもしれない。そう思って口を開こうとしたら、何もない空間に亀裂が入った。
初めて見る現象に手にしていた尻尾を離してしまった。同じように二人も警戒している。
と、その亀裂から人が出てくる。

「クーリオ、ここに居たか」
「マクお兄ちゃん!!」

見知った相手にソファから降りると、走って向かったら抱き止められた。片手で抱き上げられ頭を撫でられる。
その後ろからまた二つの影が飛び出してきた。

「クーリオ!!」
「リオ、無事か!!」

後ろからパパとママの声が聞こえてきて僕は嬉しくて声を上げていた。

「パパ、ママ!!」

安心したように顔を緩めた二人から頭を撫でられる。ついそれが嬉しくてくすくす笑っていたらパパとママが目を見開いて固まっていた。視線は僕の後ろに向いている。

「俺の頭に猫耳だと……リィンは可愛いからいいけどよ」
「あのな……」

後ろを振り返るとパパが二人、ママが二人とも見詰め合っていた。だがすぐに良かったねって言われた。

「パパとママが来てくれてよかったね」

ママによく似た人が優しく笑ってくれた。だから同じように笑って返す。
僕も大きくなったら獣耳と尻尾が欲しいな。凄く柔くて気持ち良かったから。
マクお兄ちゃんに抱かれながら、亀裂の中に入るとそこは見慣れた家に戻っていた。凄く不思議で後ろを振り返ると亀裂の隙間から耳と尻尾のあるパパとママが手を振っていたので、振り返す。
そして亀裂はあっという間に消えてなくなった。

後で聞いたけど、理由はわからないが僕は違う世界に落ちたそうだ。
だから耳と尻尾があったパパとママは向こうの世界のパパとママで間違いないらしい。
そして耳と尻尾が欲しいとお願いしたらパパもママも困ったようにしていた。
でも一週間後、頭に猫の耳と尻尾付きの着ぐるみをパパとママにプレゼントしてもらった。
とても嬉しくてずっと着ていたら、パパが同じものをママにプレゼントしていたのを見た。
今日もパパとママは仲良しだ。

サイト掲載日 [2016年3月23日]
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誕生日(12月中旬)にしるくさんから頂きました♪ ありがとうございます♪
くーちゃんかわいい!! 猫クロリンもかわいい!!
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開設:2014/02/13
移転:2017/06/17
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