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 二月になり、この時期は受験シーズンかぁ、と去年の大学受験の時のことを思い出す。
 あの時は、色々とリィンがしてくれたな、と笑う。
「クロウ? 何笑ってるんだ?」
 リィンがちょいっと顔を覗かせた。
 顔を覗かせたリィンを手招きして、近寄ってきたところを捕えて腕の中に閉じ込める。最初は抵抗するリィンだが、更に力を込めると諦め、素直にこの腕に留まってくれる。
「んー、去年のことを思い出してただけだぜ?」
「去年? 大学受験のことか?」
「あの時はお前が色々とやってくれたなぁーって思いだしてな?」
 そう言いながら俺はリィンの肩口に顔を埋め、当時のことを思い出した──。



 俺が部屋に篭もり、受験のための勉強をしていると、リィンは遠慮がちにドアをノックして開ける。手にはリィンが俺のために作ってくれたであろう夜食を持っている。
「クロウ、調子はどう?」
「まぁまぁってところか? 本番で本気出せばちょろいちょろい」
「普段から本気を出すという選択肢は……」
 夜食を置きながら呆れたような目で見られる。
「普段から本気出したら疲れるだけじゃねぇ?」
 そう言うと更に目を細められ、俺は肩を竦める。
「あ、そうだ。そろそろ受験が近いから、お守りとか買いに行こう」
「いらんいらん。大丈夫だって」
「クロウは大丈夫って言ってるけど、俺が心配なんだ……。だからな、行こう?」
 首を傾げながらリィンは言う。こういう仕草がなんで似合うんだよ、お前は、と頭が痛くなる。
 襲ってくれとでも言っているのか、と言いたくなる。以前忠告として言ったことはあるが、全くの無自覚なこいつに言っても無意味だった。それどころか、変な目で見られたな、こいつに。
「わーったよ。心配症だな、リィンは」
「心配、したら駄目なのか?」
 そう言うと、眉目を垂らしてしまう。
 だからそんな顔をするなと──駄目だ、これ以上は俺がもたねぇ。
「リィン!!」
「え、何……って、ちょっと、クロウ!?」
 リィンの両腕を掴み、ベッドに押し倒した。それでリィンは慌てる。
 慌ててるのもかわいいよなぁ。
「ちょっと、明日出かけるんだろう!?」
「煽るお前が悪い」
 抗議し、抵抗するリィンの唇を塞いでやる。
 そうすると徐々に抵抗も弱くなって、それからは、まぁ、手加減できなかった。


「リィン、朝食作ったが、動けるか?」
 いつもは俺より早起きのリィンだが、今日は俺がリィンより早くに目を覚まし、朝食の準備をし終わって、まだベッドですやすやと眠るリィンに声をかける。
「腰が、痛い……。けど、起きる……」
 そう言いながら、よろよろと起き上がる。そんなリィンを支えてやる。
 昨夜のことを文句言いながらも、自分ではまっすぐに歩けないため、素直に俺に甘えてくるお前が可愛くて、また襲いたくなったが、そうするとしばらくは無視されそうだから、それはやらねぇ。
 それから朝食をとり、合格祈願のお守りを買いに行った後、リィンが他にも買い物したいものがあるからと、街の方へと向かい、百貨店に入る。
 よろめきながら、買い物をする姿は危なっかしくて、見ていられないが、待っていてくれと言われてしまった手前、大人しく待機している。
(今のあいつ、色っぽくて、ヤバいんだが…大丈夫かね)
 とか思っていると、なんかチャラチャラした奴らに囲まれるし。
 殺すか、あいつら。
 リィンが困ってるのを見て、俺は動く。
「だからさ~、別にいいじゃん? 俺たちと一緒にどこか行こうぜ?」
「いや、だから……俺、男なんですけど……」
「またまたぁ~嘘ついちゃ駄目だよ~?」
「本当なんですが……」
「リィン、どうした?」
「あ、クロウ……」
 チャラチャラしたやつらを睨むと、そいつらは冷や汗をかき、そして、俺の顔に見覚えがあったのか、何かこそこそと話を始めたかと思うと、用事を思い出したとか何とか言いながら、去っていった。それにリィンはホッと胸を撫で下ろしていた。
「何だ、あいつら」
「知らない……。買い物してたら声かけられた……。男だって言っても信用してくれないし……。もう声かけられるの嫌だからさ、クロウ、側に居てよ」
「あぁ、勿論いいぜ」
 リィンのその申し出に快く承諾する。
 元々、離れているつもりはなかったしな。
 それから、リィンに付き添って買い物を続けた。なんか大量にお菓子の材料買ってたんだが、何か作るのかって聞いても、何も答えてくれなかったが──。

 それから数日後、受験も難なく終わり、寛いでいると、リィンに小さな箱を渡された。
 開けてみると、チョコレートで、日付を思い出した。
「あぁ、今日はバレンタインか」
「あまり甘くないようにしたんだけど、甘かったらごめん……」
 申し訳なさそうな顔でリィンは言うが、お前にもらったのなら、甘くても全部食べてやるのに。
 貰ったチョコを一口食べる。
 ほろ苦くて、俺の口にはちょうどいい。
「リィン、ありがとうな」
 そう言うと、リィンは笑顔を向けてくれた。
 お礼に、キスを落とした。
サイト掲載日 [2014年2月14日]
pixiv [2014年2月14日]
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開設:2014/02/13
移転:2017/06/17
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