×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
パタパタと部屋に近づいてくる足音に、俺は笑みを浮かべる。
「おはよう、クロウ。あ……やっぱりまだ寝てる」
顔を見なくてもその声が誰のものかは分かる。
俺の幼馴染で、一番愛しい存在──リィン。
リィンは俺が寝てると思っているのだろう、ベッドに近づいて揺さぶってきた。
「クロウ、朝だって! 起きろよ」
しばらくは狸寝入りを決め込む。リィンが油断したところで、俺は手を伸ばし、リィンの腕を掴んで布団の中に引きずり込んだ。
「うわっ!」
俺をまだ寝ぼけてるふりをして、リィンをこの腕に抱き込み、顔を肩口に埋め、その匂いを堪能した。リィンの匂いはいつもいい匂いがする。
俺のその行動に、リィンは抜けだそうともがいているが、俺は逃がさないようにと力を込める。
「ちょ…クロウ!? 起きてるだろう!!」
そろそろ起きないと、怒られそうだなこれは──と思いつつ、俺は目を開ける。
「おはようさん」
「おはよう。……って、本当は起きてただろう!」
「さぁてね」
俺はとぼけながら身を起こした。もちろん、リィンを抱えたまま。
不満気なリィンにキスを落とした。そうすると未だに不満気だが、リィンもお返しとばかりにキスをしてくれる。頬を赤くしているのはきっと気のせいじゃないだろう。何だ、この可愛いやつは、と思う。
本当はずっとこうやってリィンを腕の中に閉じ込めておきたいが、そういうわけにも行かない。もう一度キスを落とし、準備をするべくベッドから出る。
こんな日常がほぼ毎日のように行われている。
リィンが用意していてくれた朝食を2人で一緒に食べ、時間になると、2人揃って学校へ行く。とは言っても、自分は大学生でリィンは高校生なので、途中までだが──。
リィンをバイクの後ろに乗せ、リィンの高校へと向かう。運転はもちろん、安全運転だ。リィンに怪我なんかさせたくねぇしな。
まだ時間があるのを確認し、途中でバイクを止め、二人で並んで歩く。──少しでも一緒にいられるように。
「今日も同じ時間に終わるんだろう?」
「ああ」
「迎えに行くから、待ってろよ」
「わかった。いつもありがとう、クロウ。あ、でもたまには俺より他のこと優先してもいいんだけど……」
そう言いながら、表情は暗いのをこいつは分かっているのかと思いながら、苦笑し、リィンの頭を乱暴に撫でた。
「わわっ! 何するんだ、クロウ!」
「ばぁか、俺がお前優先したいの。分かれよ」
「で、でもさ……」
まだいいやがるか、こいつはと思い、口を封じてやる。俺自身の唇で。
間近で見れる双眸が見張られる。
「な、何するんだよ!」
「んー? 嫌だったか?」
「い…嫌じゃないけど、でもこんな公然で……!」
「何回も俺がお前を優先したいって言ってんのに、分からないお前が悪い。なんなら分かるまでしてやろうか?」
「いや、それはちょっと……」
リィンは口に手を添えながら、一歩下がる。俺はそれに苦笑する。
学校に近付くにつれ、リィンに挨拶して通り過ぎて行く生徒たちが多くなる。それはリィンが生徒会の仕事を手伝い、多くの生徒や人々に関わっているからだが、実を言うと、面白くない。
まぁ、困ってる人を放っておけないリィンに言ったところで無駄だというのは分かっているが。
校門より少し手前で、やりとりをし、俺はバイクに跨る。
「それじゃ、放課後にな?」
「わかった。大学サボるなよ?」
「わーってるって」
高校で散々サボって単位が危なくなった前科があるため、リィンは毎回サボるなよと忠告してくれる。本当は、もう一年高校生やっても良かったんだがなぁと思ったが、リィンによる説教が永遠と続き、サボらない留年しないと約束してしまったので、その約束を破らないようにしている。
「それじゃな」
「ああ」
俺はバイクを発進させた。
俺が見えなくなるまで、きっとリィンは見送ってるんだろうな、と思うと今日も頑張れる。
──これが俺たちの日常。
pixiv [2014年1月21日]
© 2014 唯菜
© 2014 唯菜
| HOME |