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「……まったく」
人のベッドに勝手に上り込んで寝入っている子供を見下ろして嘆息する。
もともと睡眠自体が必要なわけじゃないからベッドを占領されたこと自体には支障があるわけじゃない。問題はその占領している存在、だ。
元々理解の果てにある思考の持ち主だと思っていたけれど。殺されかけた相手の前でここまで無防備に眠れるものだろうか。それとも、殺されないと高を括っているんだろうか。
殺されないと思おうとしても、首を絞められたあと手を伸ばされれば怯えを見せるのが普通だろう。強い弱いとかじゃなく、本能的に。
けれど。この子供は、怯えもせず、震えもせずにただ受け入れていた。
馬鹿げている。
生存本能が本格的に壊れているというわけじゃ、ないんだろう。現に、晒された白い首筋には、俺が締め上げたときにもがいて自分で引っ掻いた爪痕が蚯蚓腫れの様に残ってしまっている。
内出血に歯型に扼痕に、真新しいピアス。
この子供には似合わない如何わしい匂いは、俺に染み付いてしまっている物なんだろう。慣れきってしまっていることに、この子供の存在を通して気づかされてしまう。
導力魔法で癒してしまおうか。前にたんこぶを癒した様に。
けれど。それを惜しいと思ってしまっている自分の心情に苦笑する。
逃げる気がない鳥は。風切り羽根を切って鳥籠に入れてしまおうか。
サイト掲載日 [2014年3月1日]
© 2014 水瀬
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